女芸人にぼしいわし・いわし初エッセイ 大阪から“非よしもと”で売れたい「エキスが出すぎ、直視できない」

 女性お笑いコンビ・にぼしいわしのいわしが、このほど初エッセイ集「そのうち孵化するって」を発売した。2019年、2020年に女芸人ナンバーワン決定戦THE Wの決勝に進出した二人は現在、大阪で漫才を軸にフリーとして活動中。「誰もやっていないことをやった上で成功したい」と話す、ネタ作り担当でツッコミいわしの感性が、エッセイに投影されている。

「お笑いを披露するとき、自分達では面白いと思っていることでもスべってしまうことがある。非常に遺憾である。誠に遺憾である。しかし、悲しいかな、こうも人類は見事にスベってしまうことがある。自分では面白いと思っているのに、なんだか伝わらない。

そのとき私は、かなり焦って困ってしまう。なんでスベったのか、なんでうまくいかなかったのか原因を追究することに徹する。それはなぜかというと、私は心の中にお笑い姑を飼っているからだ……(本文より)」

 いわしは「私のエキスが出すぎていて、どうにも直視できない」と苦笑いで前置きした上で「ファンタジーに飛びすぎないけれども、日常では起こらないようなことが好き。ネタと同じような感じになっています」と語った。コンテンツ配信サイト・noteの文章が目に留まった編集者の企画を受け、締切が迫る中、1週間で一気に3万字を書き上げたという。“意味の手前、幻想のエッセイ”と評される13タイトルが収められた。

 大阪出身のにぼしいわしは2013年に大阪NSC35期を卒業するも、すぐに活動休止。2016年からインディーズライブなどで活動を本格的に再開し、2020年に当時の所属先を退所しフリーとなった。2021年に松竹、フリーの芸人とユニット・WESTANTSを結成。今年5月、心斎橋にオープンした100人収容のライブ会場・楽屋Aを拠点に、“非よしもと芸人”の躍進を目指す。

 「大阪でフリーの立場から、自分たちでライブシーンを盛り上げて売れる芸人がいないので、それをやってpいきたい。面白いことをやったとき、直接浴びる笑い声は、テレビだったら一部分が切り取られる。お客さんに舞台上の全部を見てもらえることに魅力を感じるので、テレビも面白いと思いますが、私はライブの方が好き」

 ライブにスポンサーがつき、全国ツアー等を行い、舞台で生きていくことが夢。お笑い界で“非よしもと芸人”の成功は東京より大阪の方が厳しく、そもそも吉本所属だから売れるわけでもない。東京で活躍するAマッソ、オダウエダら女芸人からは上京を勧められるというが、「誰もやっていないことをやった上で成功したい」と大阪にこだわる。

 ネタ作りに加え、自ら営業活動、ライブの企画・運営も行う。「てっとり早く売れるには、賞レースで勝つことが一番の近道」とTHE W、M1に視線を向ける。その一方、「賞レースは最終的にはテレビ。その差を今、痛感しています。例えば準々決勝くらいまでは、ライブを見慣れたお客さんがいますが、それ以上は、お笑いはテレビで、という人が多いのか感覚が違ってくる」と、難しさも感じている。

 テレビ局に売り込んだ際「キャッチコピーがない」と指摘を受けることが多い。それでも「キャッチコピーがないとテレビで使いづらいというのはありますけど、私たちはなんでも面白いと思ったことをやりたい。パッケージされたくない」とキッパリ。初エッセイ集は好評で、それほど親交が深いわけでもない芸人からも感想が届くという。エッセイを「ネタで消化できないことが消化できる。脳内の整理というか、引き出す場所ですね」と、いたずらっぽく自己評価した。

 にぼしいわし・いわし「そのうち孵化するって」は、TRASHBOOKSからスマホ表示に最適化したPDF書籍でオンライン販売中。1000円。

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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