横浜銀蝿・翔が64歳で落語に初挑戦 大ヒット曲は「都々逸」だった!兄・嵐さん死去に「生涯現役」
1980年代初頭に一世風靡(ふうび)したロックンロールバンド「T.C.R.横浜銀蝿R.S.」のボーカル・翔がこの夏、64歳にして落語に初挑戦する。お笑いトリオ「コント赤信号」の小宮孝泰が主宰する落語会「ごらく亭」の第13回公演(8月13日、東京・新宿の角筈区民ホール)で初めて高座に上がるのだ。また、7月から地元のテレビ神奈川(TVK)で自身初の冠番組もスタート。出演する新作映画の8月公開も決まった。本業のミュージジャンに加え、落語、テレビ番組MC、俳優と活動の幅を広げている翔が、よろず~ニュースの取材に対し、充実する還暦後の新たな活動を語った。
小学生の頃から父の影響で落語に親しんだ。時代のちょう児だった初代林家三平をはじめ、日本テレビ系「笑点」大喜利コーナーでの桂歌丸と4代目三遊亭小円遊の“罵倒合戦”に夢中になった。22歳だった80年9月に横浜銀蝿でメジャーデビュー。テレビの歌番組で「こわもてのツッパリ」というイメージが定着したが、「実は、しゃべりが横浜銀蝿のキモだった」と明かす。
「(TBS系)『ザ・ベストテン』など、テレビでは僕か嵐(らん)さんがボソッと怖い顔したまましゃべっている感じだったんですけど、本当はラジオやコンサートのMCが面白いというギャップで、ファンも付いてきた。アマチュアバンド時代にはコンテストで『MCが面白いベストボーカル賞』をもらいました(笑)。さだまさしさんにはかなわないですけど、『銀蝿でMCだけのレコードを作ろうか』と嵐さんに相談したこともある。銀蝿のコンサートには『対話集会』というファンの悩みを聞くコーナーがあり、しゃべりは鍛えられた。そういう流れがあって、今回の落語挑戦にも続いているわけです」
近年、落語との縁ができた。横浜市戸塚区の「エフエム戸塚」で「大ちゃん歌さんの人生楽しみま翔」で共演する落語家・桂歌助を師匠と呼ぶ間柄となり、番組内で『翔々亭喋杉太郎(しゃべりすぎたろう)』という高座名を名乗った。さらに、演芸専門誌「東京かわら版」(2021年3月号)に寄稿し、自身が作詞した横浜銀蠅の大ヒット曲「ツッパリHigh School Rock'n Roll(登校編)」と都々逸の共通点を指摘した。その内容に注目した小宮からオファーがあり、昨年、初期メンバーのリードギター・Johnnyが期間限定復活した「横浜銀蝿40th」のツアーを終えて、今年の初参加につながった。
「今日も元気に ドカンをきめたら ヨーラン背負って リーゼント…。歌詞を書きながら、これって都々逸だなと思ったんです。七・七・七・五って、メロディーとリズムに合う。日本語特有の音数律だと、歌詞を書いた20代の時に気づきました。そのことを『東京かわら版』に書いたら、25年ほど前から音楽劇で接点のあった小宮さんから連絡をいただいたのです」
「ごらく亭」での演目は当日のお楽しみだが、音楽的な背景から「都々逸ファンタジー」的な世界観が期待される。
「落語に関して僕はアマチュアですし、プロの落語家さんをリスペクトしています。みなさんに失礼のないように、目いっぱい練習して、素晴らしいものを高座でやって、素敵な景色が見たいと自分では思っています。リーゼントにサングラス、黒の浴衣に銀色の帯を締めて。『落語に挑戦する』という気持ちは伝えたいなと」
7月5日からTVKで毎週火曜深夜放送の「翔くん 豪ちゃん 翔和へGO!」がスタート。プロインタビュアー・吉田豪とのコンビで「昭和」をテーマにしたトーク番組だ。2回目の放送では、同じ横浜を拠点にした音楽活動で互いを意識してきたクレイジーケンバンドの横山剣を初のゲストとして迎えた。
俳優としては映画「湘南爆走族」(87年)などに出演してきたが、8月5日公開の「甲州街道から愛を込めて」(いまおかしんじ監督)では主人公の父を演じ、もう1本は年末にも公開見込み。横浜銀蝿の新アルバムは今秋リリース予定で、年末に向けてコンサートツアーが始まる。
「テレビ、落語、映画、レコーディング、ライブ…頭ぐちゃぐちゃなんですけど、ありがたいなと思います。6月のバースデーライブでやった弦楽四重奏とピアノという音楽体験もそうですが、還暦過ぎてから新しいことにチャレンジしていくことは発見もあって素晴らしい。スタイルが変わると、歌い方やギターの弾き方も、横浜銀蝿の4人でやっている時とは全く違ったものが自然と出てきて新しい形になる。誕生日の時に『ジジイに見えないジジイになる。年齢を超越して、翔ってすげぇな…と思われるような仕事をしていきたい』と言いましたが、体だけには気をつけてやっています。今とても楽しいですね」
横浜銀蝿のリーダーであり、兄である嵐ヨシユキさんが7月4日に67歳で亡くなった。翔は「生涯現役 貫いたね」とメッセージを送った。その言葉を自らの胸にも刻み、現役であり続ける。
(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)