レズビアン公表の元バレー選手「美人過ぎる」と評された現役時代と今、「もったいない」という声への思い
「美人過ぎる女子バレーボール選手」と称された滝沢ななえさん(34)がレズビアンであることを公表してから5年になる。性的マイノリティーとされる「LGBTQ+」の人たちが職場や仕事探しで直面した悩みなどの声を集約したフリーマガジン「BE」(6月創刊)の編集スタッフとなった滝沢さんが、よろず~ニュースの取材に対し、自身のジェンダーや近況などを明かした。
小学2年から競技を始め、東京の名門・八王子実践高では「春高バレー」などで活躍し、主将を務めた。2006年にVリーグのパイオニア・レッドウィングスに入団。09年のシーズン中にV・チャレンジリーグの上尾メディックスに移籍し、13年に引退した。17年に放送された日本テレビ系のバラエティー番組で自身がレズビアンであり、年下の女性と交際していることを告白して話題になった。
カミングアウトによって、滝沢は「生きやすくなったというのはすごく感じています。家族や友だちとの会話一つにしても、自分のことを隠さなくてよくなった」と明かす。
レズビアンであることを自覚したのは「21か22歳頃」。それ以前に男性と交際したこともあったが、「お付き合いしている時は恋愛に関して、周りの友人とは何か違うなというのはずっと感じていました」。スポーツ選手は集団生活で密な関係を築くが、その中で違和感を覚えたことはあったのだろうか。
「高校時代やプロでも寮生活で共同風呂だったんですけど、私の場合は性自認が女性なので、お風呂に一緒入るのが嫌だといった思いは全くなかったです。『言いたくても言えない』ではなく、『言わなくてもいい』と。同期で信頼関係のあるチームメイトには話しましたけど、それ以外の人には一切言わなかったです」
自身のセクシュアリティーが原因でチームプレーに支障が出たら…と考えると、公表する選択肢はなかったという側面もあった。その現役時代に「美人過ぎる」と形容されたのだが、自身はどう感じていたのか。外見で価値判断する「ルッキズム」が問題視される昨今、配慮を要する言葉になった「美人」という表現について。
「私の場合、そういう表現に違和感はなかったです。ただ、一つあるとすれば、私はそこまでトップレベルの選手ではなかったにもかかわらず、見た目の部分で取り上げられるということは一アスリートとしては悔しいというか、そういう思いはありました」
公表後は「美人なのにもったいない」といった、異性愛を前提とした声もあったという。
「それは言われましたね。SNSでもそういうメッセージはありました。『結婚して子どもを産まないのはもったいない』とか。昔はフェミニン(な外見)で、今のようにボーイッシュな感じではなかったので、『かわいいのに、もったいない』とか。自分の中では『こういう自分を応援してくれる人に応援してもらえたらいい』と思っているので、そうですか…というくらいで」
生活を共にするパートナーがいる。だが、日本で同性婚は法的に認められていない。
「一緒に住んで4年くらいです。私自身は結婚ができないからといって不便を感じたことは今のところないです。私が自営業でメインに働き、パートナーは家で仕事をしながら専業主婦みたいな感じでやっていますけど、扶養家族には入れないとか、制度的な部分で少し感じることはありますね。私自身は結婚に対する意識が薄いかもしれませんが、同性同士で結婚できる日本になってほしいという思いを持っている人はいっぱいいると思います」
19年、東京・六本木に女性対象のジム「パーソンズ トレーニング・サロン」を開業し、パーソナルトレーナーを務める。
「40代-50代の方が多いですが、20代から私と同世代の30代も含めて年齢は限定していません。トレーニング、体のケアがメインの業務で、1対1で会話もするので、そういう話をしに来る人もおられます」
求人検索エンジン「Indeed」の日本法人「Indeed Japan」が発行する「BE」の編集スタッフとしての思いも語った。
「当事者はもちろん、そうでない人たちに多く読んでもらいたいです。『こういう悩みがあるんだな、こういうことで困っていることもあるんだな』と知っていただけたら。ご家族、友人、職場など、みなさんの周りにも、私のような当事者がいるかもしれないと少しでも思ってくれたらうれしいと思って発信しています。私の姪っ子からも『チューは男の子と女の子がするもの』という会話が自然と出て来るので、お子さんにも読んでもらいたい。子どもさんに伝えてくださる学校の先生や、スポーツだったら監督さんやコーチらにも情報発信できる冊子ができればいいなと、スポーツ出身者として思います。子どもに触れ合う大人の意識が変わることが大事だと思います」
子どもたちが「男らしく」「女らしく」という考え方から自由な世界で成長することを願う。
(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)