横浜銀蠅・翔、高座デビューで亡き兄に捧げた落語「都々逸親子」 主宰のコント赤信号・小宮孝泰も評価

 お笑いトリオ「コント赤信号」の小宮孝泰が主宰する役者の落語会『「ごらく亭」の夏休み』が都内で開催された。2011年以来、毎夏開催されており、第13回となる今回はロックンロールバンド「T.C.R.横浜銀蝿 R.S.」の翔が64歳にして落語に初挑戦するなどの話題があった。台風8号が東京を直撃した土曜の午後、会場に足を運んだ。

 いの一番は山口良一。1981年の大ヒット曲で、自身が所属したイモ欽トリオの「ハイスクールララバイ」(三味線バージョン)の出囃子(でばやし)で高座に上がった。

 山口は「ありがたいお客様ですよね。台風で、コロナで…。私、来たくなかったですけどね」と客席の笑いを誘うと、「私もおかげさまで67歳。年金もらって、ワクチンも4回打って、高齢者生活を謳歌(おうか)してます!最年長がトップバッターで、この後に出て来る者はみんな私より年下なんですけど、若者はいません!(ちなみに、高座に上がった7人中、4人が60代)」といったマクラで会場を温めると、古典落語「道具屋」を軽妙に披露した。山口は俳優・大森ヒロシとの漫才でもボケ役に徹して笑いを誘った。

 女性お笑い芸人でシンガー・ソングライターのオオタスセリは時事ネタも取り入れた新作落語、俳優の曽世海司は「堀の内」、鬼頭真也は「小言念仏」を披露。また、メンバー全員で「お座敷芝居」と題して古典の大ネタ「文七元結」を元にした落語コントを演じた。

 翔は背中に「横浜銀蠅」のロゴとメンバーの顔がプリントされ、右膝のあたりに「仏恥義理」と記された黒の浴衣にサングラスで登場。「小学生時代に父親の影響で落語が好きになり、中学でドロップアウトしてロックンロール一筋、あれ(80年のデビュー)から42年」と切り出すと、小宮との縁や初出演に至った経緯などを説明。出演者の名が出る「めくり」には「翔々亭喋杉太郎」という高座名の記載を希望したものの、小宮から「長いね。バランスというものがある」と却下されて「横浜銀蝿・翔」に落着いた裏話も笑いと共に明かした。

 横浜銀蠅の大ヒット曲「ツッパリHigh School Rock'n Roll(登校編)」の七・七・七・五調の歌詞と都々逸には共通点があると、演芸専門誌「東京かわら版」につづった翔。その文章が今回の出演の起点になったこともあり、落語の師匠である桂歌助から勧められた「都々逸親子」を高座デビューのネタとした。3代目三遊亭圓右による昭和の新作落語で、古典に近くなった同作を半年間の稽古を経てネタおろし。翔は「チトンシャンシャン」と口三味線をしつつ、鍛えられたノドで節回しを披露。「歌いたくなるんですよ。前前前世から俺はミュージシャン」と銀蝿ファンが詰めかけた客席の爆笑を誘い、アドリブも交えながらやり切った。

 トリを務めた主任の小宮は人情噺「佃祭」を披露。「還暦を過ぎ、もうすぐ喜寿という年齢に差し掛かってきたら、笑いだけでなく、人情ものもやりたい」。今春、66歳になった小宮は記者の取材に思いを語っていたが、円熟を迎えた新境地をその場で感じた。

 最後は舞台にメンバーが勢ぞろい。翔は「初めての落語で緊張しました。2回目はあるのか…」と神妙な表情も、小宮は「落ち着いていましたよ。セリフも覚えて、声の出し方もいい」と評価。翔は「7月に横浜銀蝿の嵐(らん)が亡くなりました。落語を兄貴に見てもらいたくて一生懸命稽古もしてきたんですけど、残念なことに…。10月に嵐さんのお別れ会を予定し、11月くらいから追悼ライブをと思っています」と亡き兄への思いも吐露した。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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