コロナ禍で収入減 自己破産してもすべてが没収されるわけじゃない! 弁護士が解説
コロナ禍で収入が途絶え、借金が返せなくなった、一人暮らしで生活費が足りず、少し借りただけのつもりが利息が膨らんだ、住宅ローンが払えなくなり、このままだと家を失ってしまう等、お悩みは様々だと思います。債務整理には大きく分けて任意整理、個人再生、自己破産の3つの手段があります。自己破をしても財産はすべて没収されるわけではなく、残るものもあります
まず、自己破産をするということは、預貯金や車、家電までもが没収されてしまうとお考えの方もいるようです。おそらく生活保護制度とイメージを重ねておられるのだと思います。
たしかに破産者が持つ財産を処分してお金に換え、債権者に平等に分配(配当)し、それでも足りない部分について免除してもらうというのが自己破産の原則です。処分しなければならないものがあるという点で、生活保護制度と少し似ています。
しかし、自己破産制度は、破産者の生活再建を目的としています。生活再建に必要なすべての財産を取り上げてしまっては、目的が果たせなくなります。例えば、仕事や通院等で車が必要不可欠という方も多いでしょう。
そこで破産法では、生活再建に必要なある程度の財産の保持を認めています。具体的には、99万円以下の現金、家具や家電などの生活必需品、20万円以下の価値のあるもの(預貯金、生命保険の解約返戻金、退職金、有価証券など)、査定額が20万円以下の車などです。(各裁判所によって運用が異なる場合があります)。さらに、ここに挙げた以外の財産でも、必要性や合理性が認められれば保持が許される場合もあります。
もっとも注意が必要なのは、分割払いの途中の財産です。典型的には車のローンです。カーローンは大抵の場合、完済するまで「所有権留保」がついています。車検証の「所有者」の欄が自分自身の名前ではななく、ローン会社等の名前になっている場合がそれです。その場合には破産手続きに入ると、ローン会社がたちまち車を引き揚げてしまいます。これはやむを得ないことです。
最後に、生活保護制度との違いとして、生活保護制度では役所のケースワーカーさんが定期的に家庭訪問をしますが、自己破産ではこのようなことはありません。
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◆平松まゆき 弁護士。大分県別府市出身。12歳のころ「東ハトオールレーズンプリンセスコンテスト」でグランプリを獲得し芸能界入り。17歳の時に「たかが恋よされど恋ね」で歌手デビュー。「世界ふしぎ発見!」のエンディング曲に。20歳で立教大学に入学。芸能活動をやめる。卒業後は一般企業に就職。名古屋大学法科大学院入学。15年司法試験合格。17年大分市で平松法律事務所開設。ハンセン病元患者家族国家賠償訴訟の原告弁護団の1人。