なぜ鳥取砂丘にワークプレイス?「何もない」を逆手に 県外からの利用者も
国立公園・鳥取砂丘の目の前に、地上2階建ての施設が存在している。ワークプレイス「SAND BOX TOTTORI」はガラス張りの開放的空間で砂丘、日本海を一望できる。なぜ砂丘の近くにワークプレイスを建てたのか。担当者に話を聞いた。
鳥取駅から車で約15分、最寄りのバス停「鳥取砂丘」から徒歩1分。地元企業・自治体だけにとどまらず県外の人も、会議や商談の場として足を運んでいる。オープンした5月には、「鳥取砂丘月面化プロジェクト」の一端で、タイヤメーカーのブリヂストンに月面探査車用の走行実験を行う拠点として利用された。SANDBOX TOTTORI・コミュニティコンシェルジュの作田晴香氏は「鳥取砂丘は可能性を持った場だなと思っています。何もないって言われがちなんですけど、何もないからこそできることがある」と言葉に力を込めた。
「何もない」を逆手に東京、大阪などの都市部では難しいドローンの実証実験などの場として期待を寄せている。作田氏は「都市部だと埋もれちゃうようなコンテンツも鳥取だったら反映しやすい。そういうところの実証もできる」と語った。
観光施設の老朽化、コロナ禍での観光客減少に伴って、鳥取砂丘の新たなシンボルとして期待が込められた。建設費は総額約2億円で、施設の1階には一般客も利用できるカフェエリアを用意された。コロナ禍前、年間100万人を超えた観光客は今年、夏までに50~60万人。昨年と比べると2.7倍増と回復傾向にあるが、不安はぬぐえない。作田氏は「砂丘のパラグライダー、サンドボードといった新しくて人気があるアクティビティ要素を生かしながら、もう1回盛り上げたいというのが背景です」と述べた。
20代から40代を中心としたビジネスマンが、ブレスト会議の場によく指定するという。開放的空間で活動することで、閉鎖的なオフィスでは起きないようなイノベーション、ひらめきを求めている。施設側も単なるコワーキングプレイスではなく、コミュニティープレイスとしての利用を推進している。そのため、施設の会員登録の際に個人法人を問わず審査を行っている。「今後、どういう風に自分のやりたいことを成長させていきたいか、“成長欲”があるかないかを1つ基準にしています。黙々と作業することをメインとされている方とかは、集中できるような別のコワーキングスペースを紹介しています」と説明した。
県外の利用者からは「まさに鳥取!という場で商談ができるのが良かった」と好評。ワーク後に、ラクダライド体験を通じ、コミュニケーションを取ることも。県外向けの発信、県外からの企業誘致の場として需要が高まっている。
同施設は今後、鳥取県中部、西部への展開を検討中だという。作田氏は「鳥取の魅力と、県外からの来られた方の新しい刺激を混じり合わせていきたいなと考えています」と話した。
(よろず~ニュース・松田 和城)