「人面樹」の正体に迫る ベネチアで筆者が撮影!専門家に聞く
イタリアのベネチアには「人面樹」というものがあるという。樹木の幹などに人の顔のような形が浮き出している現象だ。実際に現地で目撃し、撮影してきたジャーナリストの深月ユリア氏が、心理学と心霊現象の両面で専門家に話を聞いた。
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まずは、筆者が現地で撮影した樹木の写真をご覧いただきたい。2枚共、同じ樹木の写真だが、1枚は「目と鼻と口がある人の顔」で、もう1枚は「目と口を大きくあけて苦痛にもがき苦しむ?」ような表情の人の顔にも見えるが、いかがだろうか。
人の顔が浮き出たように見える木を「人面樹(木)」という。といっても、何が「人の顔」に見えるかは、人それぞれで、ただの「目の錯覚」の場合もある。というのも、米国の科学雑誌「ノーチラス」によると、人間は3つの点が集まった画像を「人の顔」だと錯覚してしまう「シミュラクラ現象」という心理がある。
心理学者の富田隆氏に筆者がインタビューしたところ、「人間は脳で世界を見ているので、その時の感情や動機、過去の経験などが影響して対象が認識されます。あいまいな対象を自分が慣れ親しんでいる顔や人物などとして認識しようとする心理的傾向を『パレイドリア現象』と呼びます。これに恐怖や不安の感情が投影されると、対象をお化けや幽霊と錯覚する『シミュラクラ現象』が生じます」
これは、人類の進化の過程で、周りの動物が敵なのか味方なのかを判別する為に防衛本能として身につけた感覚だそうだ。例えば、「空に浮かぶ雲が人の顔に見える」や「火星の人面岩」などもこの心理がもたらす錯覚だといわれる。
ただ、この写真に関しては、目の錯覚や心理学的な効果とは別に、何か人知を越えた不思議な現象である可能性がある。筆者はこの写真を2013年12月にイタリアの「幽霊が出る」といわれるベネチアのドゥカーレ宮殿の裏手にある公園で撮影した。ベネチアには「幽霊が出る」といわれる心霊スポットが多数あり、一部の旅行会社は「心霊スポット回り」のオプショナルツアーを催しているくらいだ。
ドゥカーレ宮殿の裏手には「幽霊が出る」と言われる牢獄があり、この樹木は牢獄の正面にある広場に植わっていた。「ベネチアのゴンドラ」といえば、現在ではロマンチックな印象が強いが、ドゥカーレ宮殿の牢獄の囚人たちにとっては「地獄への渡し舟」だった。囚人たちは「ベネチアのゴンドラ」に乗せられ、「溜(た)め息橋」を渡り、拷問を伴った取り調べを受けて、死ぬまで牢獄に閉じ込められた。ゴンドラは観光名所である「溜め息橋」を渡るが、実は囚人たちが最期に陽の目を見る“溜め息”に由来する。
筆者はこの写真を撮影した瞬間に、異様な気配と悪寒を感じたが(12月だったので、ただ寒かった錯覚かもしれないが)、もしかしたら、この「人面樹」は無念の死を遂げた囚人たちと関係があるのだろうか。
心霊能力者で稲川淳二と仕事をしていた鈴田之神助(すずきじゅん)氏に見解を聞いたところ、「このような目撃談や写真は多く撮られていますが、そのほとんどは『霊だよね?霊に見えるよね』などと思った瞬間、『この人なら私の伝えたいことを分かってくれるかもしれない!』という霊が宿り、人の顔に見えたりする木の模様などが本物の心霊の棲(す)み家となるのです」
この樹木の正体が「シミュラクラ現象」なのか、囚人たちの思いが樹木に刻まれた「人面樹」なのかは、人それぞれだろう。いずれにしても、牢獄の狭い窓から見えていた樹木は囚人たちの唯一の「癒し」だったのかもしれない。
(ジャーナリスト・深月ユリア)