スプラトゥーン?ジャクソン・ポロック? 異質すぎる建物が完成5年後に注目 制作者はビックリ!?
「昨日見つけた異質すぎる建物」…
TwitterユーザーのSeiさん(@www16d)がそう言って投稿したある建物が大きな注目を集めている。
「誰かここでスプラトゥーンとかした?」
「ジャクソン・ポロックに心酔してると思われww」
「この建物一見雑なようで、すげえ手間かかっている?」
など数々のコメントが寄せられるいかにも古そうなその建物には、壁という壁を埋め尽くすように独特の模様が描かれている。
この建物がある場所は佐賀県武雄市。調べると5年前に千葉県松戸のまちづ社が手がけたアートプロジェクト「TAKEO MABOROSHI TERMINAL」で、美術家の菅隆紀さんが制作、発表した作品だということがわかった。
この建物を制作した背景について菅さんにお話を聞いた。
野中比喩(以下、野中):今回、Twitterで作品が話題になりました。菅さんご自身も話題になっていることをご存じでしたか?
菅:アーティスト仲間から教えてもらいました。SNSに疎くて文章作るのも苦手でこの世界にいるので正直ビックリしています。作ってから5年もたって多くの方に見てもらえるとは思ってなかったです。
野中:出来上がってすぐ反応あると嬉しいのですが、なかなかそうはいきませんよね。あの作品は武雄市のまちおこしイベントの一環で建築物に絵を描いたものだったのでしょうか?
菅:そうですね。一度目の企画の参加後、半年くらいたってから使われてない倉庫になっている建物に絵を描くことが決まり、制作したのがこの作品です。10月か11月くらいで、乗馬して弓矢を射るお祭りに行った記憶があります。
製作期間は1カ月位。それまでも大きな作品を作っていましたが、はじめて人に「一人でやりきれる量じゃない」と人に手伝ってもらった思い出深い作品です。大きさはコンビニくらい、高さが9mくらいあります。
野中:一見、ペンキをぶちまけたように見えますが、たいへん細やかな書き込みですし、元々ある建物の鉄の錆などそのまま利用している独創的な作品ですね。
菅:抽象絵画で素材そのものの質感を残すのが昔からのこだわりです。使われなくなった建物や衣類とか、生命がなくなった骨などをキャンバスに再び生命を吹き込むように描いてます。ドローイングも古い建物のサビやペンキの剥がれなどを自分の中で絵に起してして書いています。抽象絵画は見る人が全く同じように感じないのも気に入っています。
野中:アーティストを目指されたきっかけは?
菅:小学3年の時、得意なことがかけっこしかなったのですが、夏休みに「絵を描いてみないか」と先生から勧められ描いたのがきっかけです。作品が金賞をとったことで「それ以外は何もないから何としても絵で食っていく」という気持ちが決まりました。
野中:方向性が固まってから変化はありますか?
菅:感じたようにずっと同じことやってる感じです。29歳くらいに英語も喋れないのにバックパッカーでオーストラリアに行って、滞在中少しアボリジニの文化に触れたというのは影響してるかもしれません。
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菅さんによって今後どんなものに魂が吹き込まれるのだろうか。現在、菅さんは駒込倉庫(東京都豊島区)で開催中の「New Works Vol.2」に作品を出展している。ご興味ある方はぜひ足を運んでいただきたい。
「New Works Vol.2」
会期:2022年10月15日 (土) - 11月6日(日) *土日祝のみオープン
時間:12:00 - 18:00
会場:駒込倉庫 Komagome SOKO(東京都豊島区駒込2丁目14-2)
参加アーティスト: 有賀慎吾、菅 隆紀、杉浦亜由子、中山晃子
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◆菅隆紀(すが・たかのり)
1985年長崎県生まれ。2009年愛知県立芸術大学卒業。主なアートプロシェクトに2013年「ドリッヒングプロシェクト」(京都府庁旧公舎)、2015年「駒込倉庫壁面ドローウイング」(駒込倉庫、東京) 2017年「TAKEO MABOROSHI実験場2017」(武雄マホロシターミナル、佐賀)、2020年「東急百貨店東横店クロージングプロシェクト」(東急百貨店、東京)、2021年「丸の内ストリートパーク」(丸の内仲通リ、東京)など。
(よろず~ニュース特約・野中 比喩)