文章、画像、音声、動画等を投稿するメディアプラットフォームのｎｏｔｅと、集英社のマンガアプリ「少年ジャンプ＋」がタッグを組み、マンガ原作を募集するコンテストが来年１月１２日まで開催中だ。さらなる投稿を促すため、面白い物語をつくるための秘訣を『オトメの帝国』『筋肉島』『雀児』『終末のハーレム AfterWorld』『放課後ひみつクラブ』などを担当するジャンプ＋編集部の岡本拓也さん、数々の人気小説を世に送り出し人気アニメ『リコリス・リコイル』の原作制作にも携わったnoteディレクターの萩原猛さんが１９日、Ｔｗｉｔｔｅｒスペースでトークイベントを開催した。

　「テーマの選びかた」「キャラクターのつくりかた」などがトークされた。

　「テーマ」について、岡本さんは「作家さんによって本当にいろいろです。伝えたいことや物語からスタートされる方も多いですが、こういうヒロインが大好きだとか、こういうシーンを描きたいというところ、キャラクターや場面から入るっていう人も結構います。ただ、描きたいことへの情熱が大事だと思います」と言及。萩原さんは「高尚なモノという脅迫観念みたいなものがあったりしますが、僕はネタでいいと思う。描きたいことへの取っ掛かりだと思っている」とし「例えば、ちょっとニッチな競技の面白さを伝えたいっていうので十分。情熱を持って何かを表現できるネタ、というのが最初に作るべき題材かな」と続けた。岡本さんも「こういうテーマの作品を読みたい、という読者は少なくて、この絵がいいな、何か面白そうだな、と外側から入ってくる人が多い。テーマ、伝えたいことを振りかざしすぎると押しつけがましくなる」「題材だけで勝負が決まることは多分なくて、素材をどう調理するか」と呼応した。

　「キャラクター」について、岡本さんは「ストーリーはキャラクターが作っていくものだと思いますし、読者がまず興味をつのはキャラクターに対して。だからこそ１話目で主人公、魅力あるキャラクターをプレゼンしてあげるのが、読者を引き込む近道だと思う」と提起。「口癖とか見た目から入る人もいますが、そういうところではなくて、何かが起こった時にどういう反応するのか、普通はこうだけど、こいつはこう行動するんだよ、とか行動とかエピソードでキャラクターの魅力を示すことが大事だと思います」と続けた。

　萩原さんは「ツンデレのキャラクターをツンデレって表現すると、誰が描いても同じキャラになる。ツンデレと表現せずに、行動やセリフ、シチュエーションの積み重ねで、ただのツンデレではなく別の概念に変わっていく。その積み重ねを自分の中に蓄積して、記号をキャラクターに変えていけるかが大事」と補足。「ただし人間をつくるのは大変。誰かを参考にするなら、一番は自分自身です。次に身近な人。ただ、普通の人はそのまま描いても面白くない。面白いところをとがらせて、特徴を伸ばしてキャラクターに変えていく実験を繰り返すと、キャラのストックができます」と続けた。

　岡本さんは「ある意味悪意を持ってというか、似顔絵に近いですよね」と納得。魅力的なキャラクターを問われると「ジャンプ+で連載中の『怪獣８号』の主人公カフカですかね。一度夢破れたキャラクターで、一話目がテレビを眺めながら自分の境遇をちょっと嘆くみたいなところから始まるんですけれど、怪獣の力を手にして夢に向かうのが、ジャンプ＋の読者層に刺さるキャラだと思いました」と挙げた。「先輩の受け売りですけれど、このキャラクターは自分に近いから、活躍すると嬉しいっていうのがある。この気持ちがあると、作品に対する読者の没入度が増すと思います。カフカは、シチュエーション的にジャンプ＋の読者層、年齢層と近い部分にいるのかなとか思いました」と語った。

　「構成の考え方」「マンガ原作と小説やシナリオとの違い」もテーマに挙がったトークイベント。決して、目新しく斬新な秘けつが語られたわけでないが、その分リスナーへの誠実さが浮かび出た内容になった。両者が幾度も「描き手のパッション、情熱が大事」と繰り返したのが印象的だった。

　同企画の応募方法は、ｎｏｔｅに「#ジャンププラス原作大賞」のハッシュタグをつけて投稿することで、期限は来年１月１２日まで。対象は小説、脚本等の形式で文章のみ。小説家や脚本家の志望者、文章やストーリー作りに自信を持つ人に「マンガ原作者」の存在を提示。審査部門は連載、読み切りに分かれる。大賞（連載部門のみ）は賞金５０万円、担当編集がつき、連載が検討される。優秀賞（連載・読切部門）は賞金２０万円、担当編集がつく。トークイベントのアーカイブが公開中。募集要項等は詳細はｎｏｔｅの該当ページまで。

（よろず～ニュース編集部）