「賞レースは嫌い」だったライセンス藤原一裕 M-1ジレンマと戦った日々 全国ツアーで取り戻した初心
お笑いコンビ・ライセンスの全国ツアー「ライセンス漫才ツアー2022」が奈良公演(29日、生駒市・たけまるホール)でツアーファイナルを迎える。藤原一裕(45)は、得意ではなかった賞レースにもがいた日々を経て、全国ツアーで取り戻した初心と奈良公演への思いを明かした。
昨年8月の福岡公演からスタートした全国ツアーは、全国6都市を巡り、藤原と相方・井本貴史(44)の地元である奈良県で千秋楽を迎える。藤原は「2022年のツアーファイナルが2023年になるという“おじさんスケジュール”です」と苦笑いしつつも、「中身は充実しています」と各都市で着実に歩みを進めてきた。
ネタにも「『こういうことが求められているだろう』と思って作っていたのが、こっちがやりたいことをやる」と変化が生まれ、「ある意味では、今が一番漫才をやっていて楽しいかもしれない」と語った。
1996年結成。5年目でM-1グランプリが始動し、それ以降は年々加速するM-1熱の波にのみ込まれた。2006年には敗者復活から決勝に進出するも、藤原は「全然楽しくなかった」と当時を振り返った。
「もともと賞レースは嫌い。簡単に言うと、得意じゃない。うちのコンビが賞レースに出ると、周りから見たときにすごく真剣に(優勝を)取りにいっている空気が(意図せずに)出ていると思うんです、気楽に出ている感じがしないというか。それが嫌なんですよね。でも、風潮として賞レースのチャンピオンにならないと仕事をもらえないし、名前は売れない」
ジレンマと戦った日々はM-1を卒業して15年以上がたった現在も「だいぶライトに(M-1を)見られるようにはなりましたけど、ついつい黙って見ちゃう」と尾を引いている。
転機は、2021年に結成25周年を記念し、9年ぶりに敢行した全国ツアー。奈良公演で「市民便りで公演を知ったおじちゃん、おばちゃんが最前列でめっちゃ拍手してくれたのがすごい嬉しかった」と地元の優しさにふれ、「ネタを作ってお客さんの前でやるのが楽しみで仕方がなかったデビューしたての頃に戻れた」と初心を取り戻したという。
感謝の意を込め、地元で行う本ツアーの千秋楽。「師匠ほどのテクニックもないし、若手ほどの勢いもありませんが、めちゃくちゃ面白いので見に来てください」と充実感に満ちた表情で語った。
◆藤原一裕(ふじわらかずひろ)1977年9月20日生まれ、奈良県生駒市出身。96年、高校の同級生だった井本貴史とお笑いコンビ「ライセンス」を結成。コンビとして99年、「第29回NHK上方漫才コンテスト」優秀賞。06年、M-1グランプリに敗者復活から決勝進出。個人として09年から3年連続「吉本男前ランキング」1位で殿堂入り。17年、「遺産ゲーム」で小説家デビュー。特技は空手。身長181センチ。血液型O。
(よろず~ニュース・藤丸 紘生)