すっかり観光地に定着 アートなゴミ処理場 大阪・舞州工場で環境問題を学ぶ

 煙突のてっぺんに大きな金の玉がついていて、外観もカラフル。奇抜なデザインの建物は、到底ゴミ処理場とは思えない。人気テーマパークUSJの近く、大阪・此花区の人工島・舞州にあるゴミ処理場「舞州工場」だ。冬の時期は葉も枯れて枝しかないが、暖かくなれば庭に木が生い茂り、外壁に絡まっているツタも葉が青々生えるなど、建物と自然との調和が感じられる。

 この地は大阪市が立候補した2008年五輪メイン会場の予定地。舞洲をスポーツアイランド、環境に配慮した地区にしようとするプランがあった。五輪は落選したが、その思いが引き継がれた。事業費約609億円をかけて、1997年3月に着工し、2001年4月に竣工した。

 同工場は2015年から大阪市、八尾市、松原市、守口市で構成する大阪広域環境施設組合の所有だが、それまでは大阪市の所有。建設にあたり、公害対策だけでなく、アメニティー豊かな空間を作りだそうとした。オーストリアの芸術家、故フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー氏にデザインを依頼。梅本勝美工場長(60)は「環境保護建築家でも世界的に有名と聞いていましたし、デザインもそうですが、自然も大事にされる方。緑化にも力を入れているということで、デザインと緑化を合体させて、こういう建物になった経緯があります」と説明。「ウィーンに古いゴミ焼却工場があったらしく、フンデルトヴァッサーさんがリニューアルされて観光名所になったらしく、われわれの方でもお願いしたようです」と続けた。

 ただ、計画当初から反対の声はあった。市議会からも「なんでこんなもの作らなアカンねん」、オブジェに1個100万円から200万円するものもあり、「なんでそういうのがいるのか」という意見が続出。市民からの問い合わせもあったという。梅本工場長は「当時、説明は大変だったと聞いていますし、僕も聞いています」と振り返りながら、「東京都さんのと舞洲工場との能力を比較して差がないとか、建設費用とか大きく差がないと説明はさせてもらいました」と語った。完成後も「こんなんいるんか」「どれだけお金がかかってるんや」と言われたこともあった。

 完成から20年以上がたち、今ではすっかり大阪の観光スポットにひとつとなっている。祝日を除く月曜日から土曜日まで工場見学が可能で、希望者は10日前までに同工場のホームページから予約が必要。コロナ禍前は海外からも含めた来場者数は年間1万8千人で、現在は減っているとはいえ、週末の予約はすぐに埋まってしまう人気ぶりだ。韓国・ソウルでゴミ処理場の建設に反対の声がそうとう多いということで、昨年9月には3社ほどの現地メディアが取材に訪れた。

 「来ていただいた方には『来て良かった』と言ってもらえます。ゴミ焼却工場というのは、迷惑施設と印象を誰もが持たれていると思われていますので、そこを払しょくできるような位置づけになったんではないかと自負しています」と梅本工場長は胸を張る。また、「これまで以上にゴミ処理について発信して、ゴミの減量につながる働きかけができれば」とさらなる目標を掲げた。

 世界の重要なテーマのひとつとなっている環境問題。学ぶには絶好の場と言えそうだ。

(よろず~ニュース・中江 寿)

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