“男らしさ”追求からメーテルら女性キャラが前に 松本零士アニメの変遷に識者が言及

 「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」などで知られる漫画家の松本零士さんが13日、急性心不全のため都内の病院で死去した。85歳。東映が20日に発表した。テレビ番組、アニメソングなどに詳しい昭和サブカルチャー研究家の剣持光さんは訃報を受け、松本零士作品について所感を語った。

 松本さんは1971年の「男おいどん」が出世作となりブレーク。企画段階から参加した1974年の「宇宙戦艦ヤマト」は大ヒットし、自身の作品である「宇宙海賊キャプテンハーロック」、「銀河鉄道999」などのアニメ化につながった。各アニメはいずれもヒットし、松本零士作品は一時代を築いた。

 剣持さんは「松本零士さんは1970年代に入ってからブレークを果たしますが、当時は既に“男は強く、女は優しく”というような風潮ではなかったにも関わらず、あえてファンタジーとしての“男の復古”をとなえたように思います」と指摘した。

 西崎義展プロデューサーとの確執が有名ではあるが、「宇宙戦艦ヤマト」を元に説明した。

 「松本さんが描く男らしさとは“男はかくありなん”と一つのことに殉じる姿勢ではないでしょうか。当時の若者を投影した古代進が、沖田十三艦長に影響され、次第に男らしさを身につけました。劇場版の『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』(1978年)では、古代はもう沖田艦長のようでしたよね。とはいえ、松本さんは“生きてこそやるべきことがある。死なせてはダメだ”と主張したことなどで、『ヤマト』のその後は複雑になっていくのですが…」

 松本作品の主人公は2パターンに分類されるという。古代進、ハーロックのように長身で端整な顔立ちのキャラ。「999」の星野鉄郎、「男おいどん」の大山昇太のような三枚目キャラ。しかし、その信念は共通している。

 「ハーロックが『男は己の旗の下に戦う』と言うように、これと決めたものに対して姿勢はぶれません。この点は鉄郎も同じですね。ところが、80年代に入ると『999』で鉄郎よりもメーテルがフューチャーされるようになるなど、女性キャラが前に出るようになってきました。男が、というテーマは薄まり、ジェンダーレスになっていきます」

 女性キャラの注目度向上は、アニソンにも反映される。ささきいさお「銀河鉄道999」、水木一郎「キャプテンハーロック」では力強くも哀愁漂う男らしさが歌われたことに対して、ゴダイゴ「銀河鉄道999」や「新竹取物語 1000年女王」の主題歌だった高梨雅樹「コスモス・ドリーム」では女心にも触れられるようになった。

 剣持さんは「レコード会社が変わったせいかもしれませんが」と前置きしつつ「信じるものに殉じるという主人公の姿勢は変わらない中、全体的にはよりジェンダーレスになっていった、と言えると思います」と締めくくった。松本作品アニメの変遷は、時代の映し鏡であったとも言えるのではないだろうか。

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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