構想1年以上 襟付き”ド派手ユニ”に込められた日本ハム・新庄監督の思い デザイナーが証言
日本ハム・新庄剛志監督(51)がプロデュースした“ド派手ユニ”が大きな反響を呼んでいる。球界OBの一部から非難される一方、選手やファンからはおおむね好評だ。構想はなんと1年以上。新庄監督の心の声を形にしたものだ。LGBTやSDGs活動などにも力を入れるファッションブランド「tenbo」の代表で、デザイナーの鶴田能史(たかふみ)さん(42)に製作の舞台裏を聞いた。
◆「いかがなものか」昭和の重鎮からクレームも
やはり、と言うか、狙い通りと言うべきか。日本ハムが「NEW AGE GAMES produced by SHINJO」と題して13日の本拠地でのロッテ戦から着用した「襟付きのユニホーム」は、野球ファンや球界OBらを巻き込んで大きな話題になっている。伝統にこだわる球界の重鎮からは「いかがなものか」とクレームが出る一方、SNSでは「かっこいい」「斬新でおしゃれ」と好評だ。
賛否両論を呼んでいる今回の新ユニホームは、おしゃれに人一倍気を遣う新庄監督が自らプロデュースしたもので、新時代にふさわしい斬新なデザインで赤と黒を基調。胸元には勝利を意味する「VICTORY」の頭文字の「V」がゴールドであしらわれている。
◆お披露目試合は最高の結末に
「勝って、かっこいいヒーローになってほしい」との願いが込められている。13日、エスコンフィールド北海道でのその開幕戦は5ー0と快勝し、本塁打あり、完封勝利と最高の形となった。これを安堵の気持ちで見届けたのが千葉県木更津市を拠点に活躍するファッションデザイナーの鶴田さんだった。
「球場に入った瞬間、すべてが新ユニホーム一色に染まっていて、全選手が登場した時には、武者震いのようなものを感じました。試合も江越選手のホームランが飛び出し、地元君津市にある新日鐵かずさマジック出身の加藤投手が完封勝利。勝たないと意味ないなと思っていたので、お披露目と勝利が重なって最高のPRになりました」
◆新ユニの構想は1年前の5月だった
勝利を念じていたのは深いワケがある。今回の新ユニホームの構想が出たのはBIG BOSS1年目の昨年5月初旬。戦力に劣るチームは低迷し、歓迎ムードは失われつつあった。やはり、勝負事は勝たないといけない。
「話題だけではファンの心はついてこなくなっている。メディアジャックもときにもろ刃の剣。今回も負ければ、袋だたきに遭いかねない。それは新庄監督も分かっていた。逆風も覚悟していたので勝ててホッとしました」
新庄監督との縁は、昨年春の沖縄キャンプ地入りの際に話題になったド派手なグラブコートの製作に携わったときから始まった。これは使い古しのグラブを再利用したもので新庄監督が阪神、メジャー、日本ハムで過ごした17年間の現役時に1つのグラブを使い続けたストーリー性に感銘を受け、ピンと来たという。
◆こだわったのは「勝利」
今回のデザインの特徴としては①襟付き(新庄監督17年来のこだわり)②選手名はフルネーム③パンツの裾にも背番号④日本ハム伝統のアシンメトリー⑤黒赤ゴールドのカラーリング⑥圧倒的に強そうに見えることの6点だった。鶴田さんが言う。
「18パターンくらいのデザインを提案し、何度も刷新をくり返してきました。短い時間で早く、最高のものを。こちらもそれこそがプロの使命だと思い、これまで培ったものをすべて出し切りました」
◆新庄監督は「軽い人ではない」
新庄監督と知り合って2年。鶴田さんが力を入れたのはどこか。
「一番こだわったのは強そうに見えること。イメージは大事ですから。新庄監督は軽い人に見られがちですが、そんなことはない。勝ちにこだわる新庄監督の心の声を形にしました。もし、グラブコートの時に作ったとしたら今回とは全く違うモノになっていたと思います。ユニホームのデザインは、そのまま社風、学風を象徴します。胸元のVはVICTORY。勝つだけじゃなく、常勝の思いを込めました」
◆平和への願いを込めて
そんな鶴田さんは元大関・小錦さんやミュージシャンのSUGIZOさんらと幅広く交流。ファッションを通じて子どもたちや障害者の社会参画などにも力を入れており、6月23日の沖縄「慰霊の日」にはファッションショーを初開催。さらに8月には長崎、9月に広島、10月に函館でも平和への願いを込めたイベントを実施する。
「こんな混とんとした時代だからこそ、平和の大切さを伝えていきたい。だれにもできないようなことをやって、若い世代の人に夢や希望を届けて行ければと思っています」
伝統と革新のバランス。ステージの違いはあれ、新庄監督と鶴田さんには同じ思いが流れているのだろう。
(よろず~ニュース特約・チコ山本)