楳図かずお 名作「14歳」の当初案は12歳、マッカーサーの言葉が理由も勘違いだった

 漫画家の楳図かずお氏(86)が8日、東京・浜離宮朝日ホールで朝日新聞社が主催する第27回・手塚治虫文化賞の贈呈式に出席。選考委員で芸人・漫画家の矢部太郎とのトークイベントでは、名作の裏話を軽妙に披露した。

 昨年は自身の美術展で27年ぶりに新作「ZOKU-SHINGO」を発表し、これまでのマンガ文化への貢献も評価され特別賞を受賞。贈呈式に続いてステージに立った楳図氏は、お馴染みの赤と白のボーダーシャツと帽子姿で登場。「これしかないんです。水玉は(現代芸術家の)草間彌生にとられちゃったから」と笑いを誘った。「水玉は分子を意味していると思うが、分子の基本形が水玉でもアクションを起こすと、直線、ボーダーになりますから」と、ボーダーは水玉の発展形であると主張した。

 代表作の「まことちゃん」は「アゲイン」のスピンオフであることを司会者が紹介したことに「ああ、そうだったんだ」と昔を思い出した楳図氏。気を取り直し「(「アゲイン」主人公の)元太郎の孫だから、“まご”とちゃん」と駄洒落を飛ばして、名前の由来を説明した。1971年にスタートした「アゲイン」は、1962年発表のコメディー「ロマンスの薬」に登場した惚れ薬を、若返り薬の設定に変え、ギャグ漫画として登場。「当時は“ギャグのサンデー”と言われたが、赤塚不二夫さんの連載が終わって、皆が慌てていたので、僕がギャグをやりますと言いました」と回想。楳図はホラーの印象が強く、周囲は心配したというが、1976年には「アゲイン」の脇役だった幼稚園児・沢田まことを主人公に「まことちゃん」がスタートし、大ヒット作となった。

 ホラー、SF、ギャグと幅広い作風で知られる楳図氏。「追いかけるとギャグになり、追いかけられるとホラーになる」という自説を元に、「人間の心理をつかみたいと常々思っています。自分のやったことのない、新しいものを描くには、やってきたことの逆をやること」とポリシーを語った。

 1995年に完結し、昨年の新作まで最後の作品だった「14歳」は当初、「12歳」にする予定だったという。「13歳はさいとう・たかをが使っている」と「ゴルゴ13」を連想させ笑わせた。続けて「14は縁起のいい数字ではないが、そういえば敗戦後、マッカーサーが日本人はまだ14歳のようだ、と言っていたな」と思い出し、14歳の設定で構想を進めたという。マッカーサーは正確には「日本人はまだ12歳のようだ」と発言したとされることを、後に気付いたが、変更しなかった。連載終了後の1997年には神戸連続児童殺傷事件が発生し、加害者が14歳であることが社会に衝撃を与えた。程なく少年犯罪が相次ぎ「キレる14歳」の言葉が取りざたされた当時を「取材の依頼がたくさん来ましたが、僕は受けませんでした。全然別だものね」と振り返った。

 最後に楳図作品の大ファンという矢部が次作について質問すると、「今後のことは考えていないんです」と返答。 一方で、「運命的な大波がきっと来ますと勝手に言っているんですけれど、今はまだ大波の段階ではない。大波が来るのを心待ちにしているところです」と新たな展開に期待を持たせた。

 同授賞式にはマンガ大賞に輝いた「ゆりあ先生の赤い糸」の作者・入江喜和氏、「断腸亭にちじょう」で新生賞に選出されたガンプ氏、「女の子がいる場所は」で短編賞に輝いたやまじえびね氏も出席した。

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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