「ゆりあ先生の赤い糸」入江喜和 作中と同様に介護に尽力「主人公に助けられた」
漫画家の入江喜和氏が8日、東京・浜離宮朝日ホールで朝日新聞社が主催する第27回・手塚治虫文化賞の贈呈式に出席した。「ゆりあ先生の赤い糸」がマンガ大賞に輝き、受賞挨拶では、自身の介護経験を踏まえ喜びを語った。
主人公である50歳の男勝りな主婦が、夫がくも膜下出血に倒れたことで人生が一変。夫の介護、夫の交際相手という美男子の登場、自身の若者との浮気、自身の病からコロナ禍生活まで、波乱の日々がユーモラスに描かれた。
入江氏は「何も話すことを考えずにこの場にいます。マンガを描くときもテーマとか一切考えず、終わりもあまり考えないんですけど、今日、いろいろな講評を聞いて、そういう話なんだと思いました」と冗談交じりに挨拶を始め、「自分では中高年のシモの話しか描いていないのに、こんな栄えある賞をいただいていいのかなと不安でしたが、いいんだなと思えるようになりました」と感謝を口にした。
昨年に連載が終了。最終盤を描いていた頃、実生活では90代の母親の認知症が進行し、介護の苦労が絶えず、老人ホームへの入居を決めるなどしたという。「逆にめっちゃ元気になるようなマンガにしてやる、と気合が入りました。主人公に助けられながら何とかなった1年だったと思います」と振り返り、作品とファンに改めて感謝を口にした。
同作品は今年10月、テレビ朝日系で菅野美穂の主演でドラマ化されることが決まっている。「見た人が元気になるドラマになればいいなと思っております」と話した。
同授賞式には「断腸亭にちじょう」で新生賞に選出されたガンプ氏、「女の子がいる場所は」で短編賞に輝いたやまじえびね氏、特別賞を受賞した楳図かずお氏も出席した。
入江喜和氏は東京都出身。1989年に講談社「週刊モーニング」でデビュー。代表作に「のんちゃんのり弁」「昭和の男」「たそがれたかこ」「おかめ日和」など。
(よろず~ニュース・山本 鋼平)