手塚治虫「ブラック・ジャック」新作発表へ AIとコラボ、手塚眞氏「時代が一番渇望しているコンテンツ」
手塚治虫さんの名作漫画「ブラック・ジャック」の新作が今秋に秋田書店「週刊少年チャンピオン」に掲載されることが12日、分かった。AIと人間のコラボレーションで“マンガの神様・手塚治虫”に挑み、新作「ぱいどん」を生み出したプロジェクト「TEZUKA2020」が3年ぶりに本格始動。「TEZUKA2023」として、誕生50周年を迎えた「ブラック・ジャック」の新作制作に着手する。手塚プロダクションが発表した。
「AI×手塚治虫」は終わっていなかった。2020年2月に「ぱいどん」が講談社「モーニング」誌に前後編で掲載されてから3年。その後も、プロジェクトメンバーであった慶應義塾大学栗原聡教授と手塚治虫の長男で映像クリエイターの手塚眞氏、手塚プロが中心となり、「AIと人間の共創マンガの実現」に取り組んで来た。
前作制作の過程で、クリエイティブの分野においてはインタラクティブ性の高い共創型AIサポートシステムの存在が、人ならではの能力である創造性の発揮につながることに着目。栗原教授、手塚プロらが中心となるチームで研究は継続され、同年7月に「インタラクティブなストーリー型コンテンツ創作支援基盤の開発」として国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)で「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」に採択されていた。
「TEZUKA2023」プロジェクトは手塚プロのクリエイターと「ブラック・ジャック」を学習したAIのインタラクティブなやりとりにより、「ブラック・ジャック」の新作を制作するもの。NEDOの委託業務で開発している技術を活用する。栗原聡(慶應義塾大学理工学部教授)、手塚眞(手塚プロダクション取締役)、村井源(はこだて未来大学システム情報科学部教授)、橋本敦史(慶應義塾大学理工学部特任講師)、石渡正人・日高海(手塚プロダクション)が主なメンバーに名を連ねた。
慶大・栗原教授は「クリエイティブなタスクへのAIサポートの可能性を強く感じたものの、同時に人の創造力に対してまだまだAIの力量が足りないことを痛感しました」と前回の企画を振り返った。この経験がNEDOに採択された研究プロジェクトにつながったとした上で「研究を進める中、絶妙なタイミングで我々の研究プロジェクトにとって大きな追い風となるChatGPTのような生成AIが登場したことは極めて幸運なことでした。今回、私たちはインタラクティブなやりとりを通してクリエイターの創造的作業をサポートする、GPT-4を基盤とするAIのコンセプトを提案しております。無論、素晴らしい技術には、今多方面で議論されている負の面に対してもしっかり考える必要があります。この研究プロジェクトを通して、さらに進化していくAIと人・社会がどのような関係を構築することが、今後のあるべき人間社会の実現のために必要であるのかという、根元的な問いへのひとつの答えに辿り着けるのではないかと思います」と意気込みを語った。
手塚眞氏は「ぱいどん」を「そのときAIはまだマンガ初心者で、慎ましい関わり方でした。それから3年。AIは飛躍的に進歩しています。もう初心者とは言えないということで、ハードルを一気に高くして、手塚治虫の代表作である『ブラック・ジャック』の新作に挑戦します」と企画意図を説明した。1話完結のためエピソードが抱負で、SF、政治、哲学、宗教など多様なジャンルを含むだけに「手塚治虫のエッセンスが凝縮されている作品。コロナ後の今の時代が一番渇望しているコンテンツと言えます。今回は様々なクリエイターが実際にAIと共同制作することで、コンテンツ作りの新たな方法論を生み出せるでしょう。日本のマンガ文化が、また新しい未来を手に入れるのかもしれません」と期待を寄せた。
「ブラック・ジャック」は秋田書店「週刊少年チャンピオン」で1973年11月から83年10月まで連載された手塚治虫の代表作。無免許の天才外科医ブラック・ジャックが活躍する医学ドラマ。今年誕生50年を迎える。
(よろず~ニュース編集部)