内縁の夫が死んだ!家族(相続人)から「出て行け」と言われたらどうなる 元アイドルの弁護士が解説

 賃貸借や隣人トラブルなど、住まいに関する身近な法律について解説しています。

 夫が借りていたアパートに離婚後も妻は住み続けることができるかというお話を前にしました。答えは、貸主と信頼関係が保たれていれば住み続けられるというものでしたね。そしてこの理屈は内縁の妻でも同じだということでした。

 それでは、内縁の夫が死亡し、夫の家族(相続人)から出ていけと迫られた場合はどうでしょうか。

 住まいの賃借権というものも財産の一種として相続の対象となりますが、ご存じのとおり内縁関係では相続人にはなれません。ですから、借主に相続人がいる場合は、その相続人が賃借の権利を相続することになり、内縁の妻にはその権利は承継されません。

 そうすると、もし仮に相続人が賃貸借契約を解除することを選択すれば、内縁の妻はそれに従って住まいを明け渡さなければなければならないということになりそうです。

 この問題について判例は、内縁の夫の死後、内縁の妻は「相続人に承継された賃借権を援用して居住を継続できる」として明け渡し請求に対抗できると判示しました。ただ、お気づきかもしれませんが、あくまでも相続人の賃借権を「援用」するというだけの話。すなわち相続人である夫の家族がその物件の契約を問題なく続けてくれるならば住めます、という話なのです。そのため、もし仮に、夫の家族が賃料を滞納し続けたら賃貸借契約は解除され、内縁の妻は結局その物件から出て行かなければならなくなってしまいます。

 そこで、最後の手段とはなりますが、内縁の妻は賃貸人に直接賃料を「第三者弁済」(民法474条1項、2項)して、契約の解除を回避できる可能性があります。本来は、契約の当事者である相続人が賃貸人に対し家賃を払うのが原則ですが、代わりに支払って、家賃滞納状態が継続するのを防ぐというわけですね。

 このように、相続人VS内縁の問題は往々にして複雑です。お困りの際は一人で悩まずに弁護士等の専門家に早めにご相談ください。

◆平松まゆき 弁護士。大分県別府市出身。12歳のころ「東ハトオールレーズンプリンセスコンテスト」でグランプリを獲得し芸能界入り。17歳の時に「たかが恋よされど恋ね」で歌手デビュー。「世界ふしぎ発見!」のエンディング曲に。20歳で立教大学に入学。芸能活動をやめる。卒業後は一般企業に就職。名古屋大学法科大学院入学。15年司法試験合格。17年大分市で平松法律事務所開設。ハンセン病元患者家族国家賠償訴訟の原告弁護団の1人。

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