「ウルトラマン」「スペクトルマン」漫画家の故・一峰大二さんの絶筆が同人誌に、82歳で初参加したコミケで頒布

 「ウルトラマン」「スペクトルマン」「風雲ライオン丸」などのコミカライズで知られ、2020年11月に84歳で死去した漫画家・一峰大二さんの絶筆作品が、12日に開幕する同人誌即売会「コミックマーケット102」(東京ビッグサイト)で頒布される。漫画家の佐佐木あつし氏が13日にサークル参加し、一峰さんの新作「電人アロー」の第5巻を持ち込む。

 一峰さんは2017年冬に82歳でコミケに初参加し、雑誌「少年」連載から50年ぶりにリメークしたオリジナル作品「電人アロー」1巻を制作。18年冬に同2巻、死去から約1年後の21年冬に同3、4巻が頒布された。第5巻はペン入れ前の下描きによる本編35ページに、設定ラフ画とカラーイラストが追加される。佐佐木氏は「あえて写植も打たず、手書き文字をそのまま載せました。4巻で裏切りにあった敵のボスに、忠誠心が高い犬型サイボーグが現れ、アローと向き合います」と説明した。

 佐佐木氏は2010年頃からアシスタントを務めるなど、一峰さんと家族ぐるみで親交を深めてきた。17年に「これからも頑張ります」と記した礼状を作成していた一峰さんが「俺は何を頑張るというのか?」と自問自答し、「口で言ってるだけではダメなんだ」と「電人アロー」の新作を描き始めた。発表のあてもなく描く姿に感激した佐佐木氏が、コミケでの頒布を紹介したという。

 コロナ禍中の20年11月下旬、一峰さんは佐佐木氏との電話を切った直後、廊下で倒れている姿を家族に発見され、同27日に息を引き取った。作業場の机に残っていた下描きによる今回の「電人アロー」第5巻。生々しい未完の絶筆となった。

 佐佐木氏は「先生は本当に真面目な方で、早朝から作業に入り、昼には必ずCS放送などで映画を1本見て、作品に生かそうとしていました。倒れる直前まで描かれていた作品を、ご家族からも背中を押されて同人誌にすることができました」と語った。「生涯一兵卒」を信条に掲げていた一峰さんが、スペクトルマンを描いたサイン色紙を手に「先生はサインを頼まれると、全部に色を付け“作品”のレベルまで描き込む方でした。そんな漫画家はほかに知りません」と、その人柄を偲んだ。

 一峰さんへの尊敬の思いを込め、今回は一峰さんの構想を原作に、佐佐木氏が漫画化した時代劇ミステリー「濁流」も頒布する。本編76ページの読み切り作品。「先生が亡くなる1年程前まで、酒の席で度々『こんなのを考えているんだ。忍者が登場して、黒沢明のような重厚な絵、アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」のようなミステリーなんだ』と新作のアイデアを私に話してくれました。その度にメモを取っていたので、数々のアイデアをまとめて作品に仕上げました。『佐佐木さんが描いてもいいよ』と話されていましたが、叶うなら一峰先生が描いた『濁流』を読みたかった」と振り返った。商業誌への掲載も検討されたが見送られたという

 「電人アロー」第5巻、「濁流」の同人誌2冊は、一峰さん追悼の締めくくりとも言えそうだ。佐佐木氏は「僕が足元にも及ばない大先生。感謝しかありません。一峰イズムを伝えていけるよう、少しでも力になりたい」と話していた。

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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