クラッシュ・ギャルズが34年ぶりフォトブック発売、スタッフが語る「天然素材の光」10・1に40周年
女子プロレス界の伝説タッグチーム「クラッシュ・ギャルズ」が10月1日に横浜武道館で開催される結成40周年記念イベントを前に、34年ぶりとなるフォトブック「CRUSH GALS」を世に出した。“アラ還”世代になったライオネス飛鳥と長与千種の「今」が表現された一冊だ。今作をプロデュースしたライターの伊藤雅奈子氏に話を聞いた。
飛鳥と長与は1980年に全日本女子プロレス興業に入団した同期コンビ。83年にクラッシュ・ギャルズを結成し、85年には大ブームを巻き起こした。
当時、大阪の女子中学生だった伊藤氏は熱狂的なファンとして、今も語り継がれる大阪城ホールのビッグマッチなどで声援を送り、その姿は2011年に出版されたノンフィクション「1985年のクラッシュ・ギャルズ」(文藝春秋、柳澤健著、14年に文庫化)で“3人目のクラッシュ”として描かれている。伊藤氏は20代にして関西発の雑誌「月刊プロレスファン」で編集長を務め、その後は東京に拠点を移し、女子プロレスから芸能取材を中心に活動を続けている。現在、18年ぶりに合体した飛鳥と長与のイベント開催をスタッフの1人として支えている。
今年7月に還暦を迎えた飛鳥、12月で59歳となる長与。両者の年齢を超越した唯一無二の魅力が詰まった「完全撮りおろし、テキストなし、オールカラー」のフォトブック。当初、伊藤氏が提案したコンセプトは「日本一かっこいいアラ還」「女があこがれる女」だったという。だが、撮影現場で、飛鳥が長与の肩に手をかけて微笑んだ瞬間、「まぶしいほどの“自発光”を放った」と振り返る。
「わずか1秒。(当初の)構想が音を立てて崩れました。同時に『コレだ!』とひらめきました。クラッシュは、天然素材をそのまま届けてこそ光る被写体。コンセプトは変わりました。光。そして、笑顔」。6月30日の復活発表記者会後、ネットには「2人がそろうと笑顔になれる」「今でもかっこいい」「私の青春」「夢のよう」「永遠のアイドル」といったコメントが続いた。伊藤氏は「クラッシュは“あの頃の少女たち”にとって、まばゆい光そのものだったのです」と実感した。
同氏は「(前回)89年の刊行時、お二人は20代中盤で、勇ましくもあどけなかった。現在は還暦前後ですが、驚くほどの美肌です。飛鳥さんのオーラは現役感を失っておらず、千種さんは相変わらず笑顔が赤ちゃんのようにかわいい。2人がそろうと、笑顔の花が咲きました。根底にあるのは信頼感と安心感。現場スタッフは口々に『今でも現役アイドル』と漏らしていました」と付け加えた。
さらに、フォトブックには「もう一つの気持ちも込めた」という。
「クラッシュファンは40代からアラ還で、ほぼ女性。こうした女性たちは今、老いに向かって進むさまざまな変化に直面しています。身体的な変調、離婚、仕事、家庭内不和、シングル生活、子どもの独立。大事な人との永遠の別れや、両親や義父母の介護。不安を抱えていない人なんていません。でも、クラッシュの笑顔はみんなの光。フォトブックがご自宅にディスプレイされ、スクショした写真がスマホのなかで“同居”すると、つらい今日も、不安な明日も、ちょっとだけ吹き飛ばせるのではないか。“クラッシュロス”に陥るであろう10月2日以降も、光が射す方向へ歩けるのではないか。そんな心を注ぎました」(伊藤氏)
自身の人生とも重ねた。
「クラッシュを入り口とした80年代女子プロは、私にとって伝えなければならない日本の文化でした。中学生の時は観客席で黄色い声援を送り、高校生の時に読んだ『Deluxeプロレス』(ベースボール・マガジン社)で、ノンフィクションライターの故・井田真木子さんの取材方法に触れて、『将来の夢は女子プロレス記者』と決心。記者生活の中で、千種さんの復帰(93年)、飛鳥さんの復帰(94年)、2度目の引退(05年4月)までを至近距離で見続けました。クラッシュと女子プロは、私の人生に彩りと経験値を与えました。それは、53年間の人生で得た最大の誇りといえるでしょう」(伊藤氏)
イベントが間近に迫ってきた。伊藤氏は「クラッシュのお二人、女子プロレスの試合を提供してくださる現役選手たちがケガなく舞台を下りることを何よりも望んでいます。そして、貴重な時間とお金を費やして来館してくださる“あの頃の少女”たちはぜひとも、頭のネジをはずしてほしいです」と呼びかけた。
長与が「そばにライオネス飛鳥がいると、若いまんまの長与千種に戻っちゃう」、飛鳥が「横に並んだのは、昔のまんまの千種。魂がね、覚えていた(笑)」などとコメントを寄せたフォトブック「CRUSH GALS」(税込3500円)。通信販売と10月1日の会場グッズエリアで発売される。問い合わせは「ifanSTORE」へ。
(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)