“エンケン”と呼ばれた伝説の「純音楽家」 7回忌公演に佐野史郎らが集結、命日前夜に新宿で開催
日本のフォーク&ロックの礎を築いたレジェンドの1人で、2017年に亡くなった遠藤賢司さん(享年70)に捧げる音楽イベント「純音楽の友~遠藤賢司七回忌公演」が24日に都内のライブハウス「新宿ロフト」で開催される。“エンケン”の愛称で親しまれ、ジャンルを超えた「純音楽家」という肩書きで自身の道を突き詰めた遠藤さん。10月25日の命日前夜に行われる公演には、生前交流のあったミュージシャンらが一堂に会する。そのラインアップと共に、裏方として奔走する人たちの思いを聞いた。
1969年のデビューから半世紀近く、フォーク、ハードロック、パンクロック、テクノから静ひつなピアノ曲まで、幅広い音楽性を血肉化した“純音楽”で世代を超えたファンに支持されてきた。「夜汽車のブルース」、「満足できるかな」、「カレーライス」、「東京ワッショイ」、「不滅の男」、「夢よ叫べ」といった代表曲も、ライブではその都度、新しい発見と共に演奏されていた。
今回の公演には豪華なメンバーが集結する。
遠藤さんと活動した3人編成の「エンケンバンド」でリズム隊を担った頭脳警察の石塚俊明(ドラムス)と元・子供ばんどの湯川トーベン(ベース)をはじめ、同世代の友川カズキ、斉藤哲夫、友部正人、鈴木慶一(ムーンライダーズ)、鈴木茂(はっぴいえんど)が出演。さらに、ミュージシャンとして遠藤さんのバックを務めるなど公私ともに交流の深かった俳優の佐野史郎、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」の音楽担当でも知られる大友良英、ロックバンド「くるり」のドラマーだった森信行も参加する。
同公演のチラシや会場で先行発売される7インチのシングルレコード「寝図美よこれが太平洋だ/満足できるかな」のジャケットには、漫画家・イラストレーターの江口寿史がフォークギターを抱えた若き日の遠藤さんの立ち姿を描いた。また、連動企画として24日まで、ポスター展が公演会場と同じ新宿にある「ディスクユニオン ベストアルバムストア」で開催される。
近年、ゆかりのミュージシャンらによる追悼ライブが開催されてきたが、今公演はどのような経緯で実現したのか。
「今回はまず、湯川トーベンさんと石塚俊明さんを中心にプログラムを組み立てたいという強い思いがありました。お二人を軸に数十名のエンケン所縁の方をピックアップして、音のつながり、組み合わせの面白さで選りすぐっていったのが、10月24日のラインナップです」と、企画・制作の森早起子氏は説明。さらに、「残念なのはPANTAさんの不在です(今年7月に死去)」とオファーを模索していたことも明かした。
がんであることを16年に公表し、翌年に亡くなった遠藤さん。それから6年、新たに、その存在を知ったリスナーもいる。
旧(ふる)くから遠藤さんと交流のあった音楽プロデューサーのサミー前田氏は「デビューから亡くなる70歳まで、ずっとやめることなく、ぶれることなく、『純音楽』を体現して来た、こんな、とんでもない人がいたということを知って欲しいです。日本語のロックの始祖、最も早いパンクロッカーといった側面もありますが、エンケンという唯一無二の存在は追求すればするほど面白いと思います」と指摘した。
10年前、宮藤官九郎監督の映画「中学生円山」(13年公開)に出演した遠藤さんに記者がインタビューした際、「自分でやりたいようにやって、それでライブに来てくださる人がいればうれしいです。歌い始めた時から“お説教の音楽”だけはやりたくなかった。『みんなが元気になってもらうために歌う』なんて言う権利はないし、ウソだと思う。自分で元気になる音楽を作れば人に伝わる。『人間をやめるな』って言葉にもつながると思います」と語っていた。
そんな思いも伝承する今回のライブ。「チラシをお渡しした際に『ふり幅が広いですね』と仰ってくださる方がいます。それはエンケンさんの幅の広さです」。森氏はそう付け加えた。
(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)