お得意様は世界のセレブ「有名人の絵描き」に聞いた トップアスリートが熱狂するもの ローマ教皇にも謁見

 米国人歌手のマドンナが、アフリカのマラウイに建設した病院のために絵をリクエストし、ローマ教皇フランシスコに謁見。英国のモデル・女優のカーラ・デルヴィーニュが満足げに彼の絵の前でポーズをとるなどして知名度が高まったアーティストがスペインにいる。

 レネ・マケラ(René Mäkelä , @makelismos)さんで、彼の顧客リストにはNBA、MLB、NFLという多数の米スポーツのトッププレーヤーが名を連ねている。複数の豪邸へも足を運び、まるで古くからの友人か家族の一員のような付き合いをしている通称「有名人の絵描き」が、目の当たりにした米国エリートスポーツ選手の間で広がっている芸術的な関心の高まりとその背景、セレブリティたちの実態について話した。

  プロのアーティストとして12年ほどで数多くの有名人と知り合い、広く知られる存在になった。成功の秘訣は?

 「以前は複数のテレビ番組で脚本を担当していた。その後不況から多くの番組が打ち切りになり、地元へ戻って絵を描き始めた。最初のきっかけは(バイクレーサーの)ホルヘ・ロレンソ。彼が私の(サルバドール・)ダリの絵をソーシャルネットワークで紹介してくれたことで幸運にも他のスポーツ選手たちやメディアが自分のやっていることに興味を持ち発信してくれ、知名度が雪だるま式に大きくなっていった」

  キャム・ニュートン(NFLカロライナ・パンサーズなど)、パトリック・ピーターソン(NFLピッツバーグ・スティーラーズ)、マニー・マチャド(MLBサンディエゴ・パドレス)、マット・ケンプ(MLBロサンゼルス・ドジャーズなど)…。スペインにいながら、主な顧客は米国スポーツのスター選手たち。なぜこんな現象が起きた?

 「大型のキャンバスサイズ、色使い、顔の表情から来る最初のインパクトが要因だろう。アメリカ人、特にスポーツ選手の好みだったのだと思う。大学では広告を専攻したのだが、私の絵には目をひく絵とともに(背景に)フレーズをよく入れていてそれは典型的な広告の形。その辺りも理由の一つだと思う」

  アメリカ人スポーツ選手たちが芸術に対して高い興味を示している傾向があると言っているが、それはなぜだと思う?

 「スポーツ選手たちの多くが芸術作品をコレクションしているというのは確か。アメリカでは選抜されて大学チームでプレーするというのが一般的で、他の学生からアートや文学といった知的好奇心の刺激を受けているのではないか。そういうものを評価する傾向がある。例えばカーメロ・アンソニー(NBAニューヨーク・ニックスなど)はスポーツ選手の中では全米有数の現代美術の絵画コレクターで、他の多くのコレクターから助言を求められている。キャム・ニュートンは私の絵を8つ持っているけど、他にも多くの絵を所有している。最近ではヨーロッパでもそういう傾向が見られはじめたが、例えばグリーズマン(サッカーフランス代表)やビニシウス(サッカーブラジル代表)は普段からファッションとしてNBAチームのユニホームを着たりと米国文化の影響を強く受けている」

  あなたの手がけた絵を見ているとモハメド・アリ、キング牧師、マイケル・ジョーダンらは今でも黒人選手にとって特別な存在のようだ。

 「彼らはいつだってインスピレーションのためのアイコンやアイドルを探している。権利獲得のために戦った経歴など、(見る者にとっての)何らかの重要な意味が必要になる。ジョーダンもとても人気があってアメリカの勝利(成功)の象徴としてバスケットはもちろん、サッカーやアメフトとあらゆるスポーツ選手たちが崇拝している」。

  いくつものスポーツ選手の家にも訪問している。

「まずキャム・ニュートンのノースカロライナ・シャーロットのマンション。500とか600平方メートルの広さで、上の階にはマイケル・ジョーダンが住んでいた。彼はアトランタにも豪邸を持っていて、門をくぐったあと家に着く前に池やバスケットコート、子供用の遊園地や映画館と全てがあった」

  彼らとのやりとりで印象に残っていることは?

 「オースティン・リバース(NBAミネソタ・ティンバーウルブズ)に絵を持って行った時のこと。家には絵を飾るためのドリルも釘もなくて、彼のフェラーリでホームセンターへ買いに行った。(そのギャップの大きさに)『俺はオーランドで何してるんだ』って不思議な気分だった」

 エリートスポーツ選手特有のエゴや個性の強さに直面したことはない?

 「全くない。彼らは普段テレビや試合で見て別世界の人って感じがするけど、実際に会ってみるとごく普通でシンプル、親近感がある。メディアではとっつきにくいとか無愛想といったイメージがある人物もいるが外部的な側面から自分を守るという必要性があるのかもしれない。自分の仕事ぶりを見て彼らの方からコンタクトを取ってきているのだから敬意を表してくれているという一面はあるだろうけど、実際に会ってがっかりしたということは一度もない」 

 チャリティーオークション用で日本代表MF久保建英の肖像画も描いている。

 「当時所属していたマジョルカの幹部から勧められてやった。彼には髪型や若さやスター性といった特徴的なイメージがある。また絵が完成した時にクラブ練習場で彼と会い、絵にサインしてもらった。練習直前で話をしたのは5分程度だったが『こんな大きなサイズ(1・9×1・3m)で描かれたのは初めて』だと言って感謝の言葉をくれた。とても親切で礼儀正しい印象がある」

  日本で、または日本人のために作品を手がけたことは?

 「ノー。ただとても興味深いマーケットだとは思っている。仲間と一緒に私の絵が入った服のブランドを立ち上げていて、そのスタイルは日本の人たちのそれに合っていると思う。旅行した知り合いは誰もが日本についての良い印象を話しているし、近いうちに訪れたいと思っている」

(スペイン駐在ジャーナリスト・島田 徹)

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