「なんで文章みたいに話せるの?」と不思議がる少女の言葉 単語で済ます家庭会話と言語力の関係性が話題
家庭での会話の環境と学習力の関係性がSNS上で大きな注目を集めている。
「『お金もらうわけにいかないし、晩飯だけ食べさせて』という約束で家庭教師をしていたことがある。指導することになったその子の状況について、家族全員に説明していたところ、その子の妹が不思議そうに『なんで文章みたいに話せるの?』と聞いてきた。」
と自身のエピソードを紹介したのは農業研究者の篠原信さん(@ShinShinohara)。
ある時、知人の家庭教師を請け負った篠原さん。その家庭には本を読む人がおらず、その影響なのか会話は「ねえ、〇〇は?」「おい、△△しろ」などと、ほとんど単語ばかりだったそう。少ない言葉でコミュニケーションできるのだから頭は悪くないはず。子供たちが学校の勉強についていけていないのは、言語力を鍛える環境が家庭にないからではと気付いたのだという。
今回の投稿に、SNSユーザー達からは
「発達障害、知的障害と思われている子供の何割かは、体験欠乏症なのかもしれないと感じました。手を動かすことも大切ですね。」
「要約すると…人が文章のように話すには家族と訓練するか本を読む事で鍛えられるによょーん」
「家庭環境って大事。わたしも今、それを作り上げる立場にあるのか。。。経験させる場を提供できるようにしなければ」
など数々の驚きの声、共感の声が寄せられている。篠原さんに話を聞いた。
ーー家庭教師を引き受けられた経緯は?
篠原:仕事の知り合いで、相談を受けたのがきっかけで面倒見ることになりました。仕事があるし副業するわけにいかないので、晩飯食べさせてもらう条件で引き受けました。
ーーご家庭内でのやり取りの傾向に気付かれた際のご感想を。
篠原:その妹の発言で改めて会話を観察すると、ほぼ単語で会話が成立していることがわかりました。しかし家族全員察しがよいので、それで補っている印象でした。察しが良いのは頭の良い証拠。でも、言語は磨かれないな、と思いました。
ーー生徒の方にはどのような指導をされたのでしょうか?
篠原:その子は多動症…今で言うADHDだと診断されていました。漢字は平気で棒を一本足したり引いたり、数字は6だか8だかわからない字を書いていました。字が間違っていてバツにされたのか、わかってなくて間違ったからバツになったのか、本人もわからなくなっており、自分が何を理解していて、何ができないのか把握できなくなっていました。
そこでことわざ集を100円ショップで買ってきて、それを1日10個、字を正確に書き写す訓練をすることになりました。最初は2時間以上かけてもそれができず、号泣していました。2ヶ月ほど経つとほぼ間違えずに正確に写せるようになりました。以後は字が正確に書けるようになり、自分が何を間違ったのか、把握できるようになりました。
ーー投稿の反響へのご感想をお聞かせください。
篠原:体験欠乏に思い当たる人が多かったようで、そこを意識的に補ってみようと思った人が多かったので良かったと思います。それによって手がかりをつかめる子どもが増えることを祈ります。
◇ ◇
言語によるコミュニケーションのみならず、若いうちにさまざまな体験を積むことは人生の豊かさを左右する。小さな子供のいるご家庭ではぜひ、意識的に体験、学びの機会を提供してあげられるよう心掛けていただきたい。
なお今回の話題を提供してくれた篠原さんは農業分野以外にも、教育や学びのヒントとなる著作を多数発表している。ご興味のある方はぜひチェックしていただきたい。
◆篠原信さん著作一覧
「自分の頭で考えて動く部下の育て方」(文響社)
「子どもの地頭とやる気が育つおもしろい方法」(朝日新聞出版)
「ひらめかない人のためのイノベーションの技法」(実務教育出版)
「思考の枠を超える」(日本実業出版社)
「そのとき、日本は何人養える?」(家の光協会)など多数
(よろず~ニュース特約・中将タカノリ)