舞華が見せた弱さ、強さになってスターダム・ワールド王座初戴冠 ひめかと涙の抱擁「今から女帝時代」
スターダムの年内最終興行「STARDOM DREAM QUEENDOM 2023」(29日、東京・両国国技館)が行われ、ワールド選手権の王座決定戦は舞華が20分39秒、みちのくドライバー2からの片エビ固めで鈴季すずから3カウントを奪取。第17代王者に就いた。
リングに君臨した新王者は高らかに宣言した。「今から女帝時代が始まる。そして、もっともっと私の時代にしていこうと思います。みんな、ホントにありがとう。笑って年越ししようぜ!」。左膝負傷でベルトを返上した前王者の中野たむをはじめ、林下詩美、上谷沙弥、ジュリアの名を挙げ「スターダムにはまだまだおもしれえヤツがたくさんいる。一人ひとり、残らず私がぶっ倒していく」と公約を掲げた。所属レスラーを引き上げるような、舞華の姿勢を示した。鈴季にも「殺意も抱いてきたけど、これじゃ終われねえよなあ。オマエは強いよ、それは認める。だから、また戦おうぜ、バカヤロー」と呼びかけた。
4度目の挑戦で、団体最高峰の赤いベルトを巻いた。今夏の5★STAR GP決勝で屈した鈴季にリベンジを果たした。場外戦、長机にエプロンから投げ捨てられるなど鈴季のハードコア殺法に先制を許すも、持ち味のパワーで反撃した。ブレーンバスター3連発で追い込めば、雪崩式からの原爆固め3連発で追い込まれる死闘。最後はJTO時代の師匠、TAKAみちのく譲りのみちのくドライバー23連発で、21歳ながら万能型の天才・鈴季を葬った。
バックステージでは、元タッグパートナーで今年5月に引退したひめかに祝福された。「やっと報われて…。(ベルト)似合っているよ」と声をかけられると、互いに涙を流し、抱き合って感激を分かち合った。
小学4年生から柔道の町道場に通った。「男の子とけんかするようになって、体も大きかったので発散させたかったんでしょうね」と、周囲の勧めだった。「すごいスパルタでした。追いかけられたり、定規で叩かれたり。水も飲ませてもらえないような」と振り返り、実業団まで柔道を続ける選手に成長した。「でも1位になったことは一度もないんです。あと一歩で頂点には立てない。『いつも、いいとこ止まりだね』と言われることもありました。それは、プロレスでも同じでしたね」。そのストレスが爆発したのが、5★STAR GP決勝での敗北だった。試合後は泣き崩れて己を恥じ、謝罪を繰り返した。
「もう他の選手の顔も見られないくらい落ち込みました。そんな自分をたくさんの方が助けてくれました、応援してくれました」
直後のタッグリーグでは、メーガン・ベーンと組み優勝。「メーガンは言葉が分からなくても、気遣いや優しさを私に向けてくれました。大きな絆創膏を私の傷に貼ってくれるようでした」と感謝した。既に引退していたひめかからは、画像を送られて励まされた。5★STAR優勝者に贈られる王冠とマントをペイントして、舞華に身につけさせる加工が施されていた。この日の鈴季戦では、ひめかの必殺技だったランニング式のパワーボムを発射。「私の技を勝手に使うな、と怒られるかも」といたずらっぽく笑った。元盟友への感謝を示すパワーボムだった。
強気な姿勢を崩さなかった舞華が見せた弱さは、強さになって返ってきた。バックステージでの「私がみんなの生きる活力になる。死にたいとか、どん底に落ちてる人たちの、私が頑張れる源になる。そういうチャンピオンでありたい」という言葉は、軽い気持ちで生まれたものではない。
中野たむのベルト返上に象徴されるように、今夏以降は負傷離脱が続出。運営の不手際も指摘され、社長が交代した。団体の危機を目の当たりにしてきた舞華。「スターダムには、本当にたくさんの素晴らしい選手がいる。私はケガをしません、ケガもさせません。リングに立ち続けて、皆を引っ張っていきます。覚悟は決めています」と言い切った。赤いベルトの王者として2024年、人生初のトップで走り続ける。
(よろず~ニュース・山本 鋼平)