東京都が麻布十番駅地下に「シェルター」整備方針を表明も、小池都知事から具体案なし 低い日本の普及率
東京都が外国からのミサイル攻撃対策として都営地下鉄大江戸線の麻布十番駅(港区)に地下シェルターを整備する方針を明らかにした。だが、具体的にどのような内容で計画は進められていくのだろうか。ジャーナリストの深月ユリア氏が、会見に臨んだ小池百合子都知事に質問したが具体的な回答はなく、改めて、都の担当者に話を聞いた。
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1月26日の東京都庁が行った記者会見で小池百合子都知事は都営地下鉄・麻布十番駅構内に弾道ミサイルの飛来に備えた「シェルター」を整備する方針を表明した。会見によると、2024年当初予算案に調査費として2億円を計上し、今後構想を詰めていくという。小池氏は「国際情勢が厳しいことを踏まえ備えが必要」「フィンランドなど、いくつかのシェルターを見てきた。参考にしながら、進めていきたい」と主張した。
しかし、2月2日に行われた記者会見で筆者が小池都知事により具体的な構想があるか質問したところ、「麻布十番駅に併設された都の防災倉庫を活用する予定で、より安全に避難できる施設のモデルはつくる」が、「時期的なものは今後決める」「東京にあったものを作る」という返答で、まだ何人収容できるか含め具体案はないようだ。
また、筆者が東京都庁総務局に取材したところ、「麻布十番駅に併設された防災倉庫を活用し、調査を実施することは決まったものの、内容や建設時期については、今後詰めていく」「今はまだ具体的なことを申し上げられない」とのことだ。同庁に昨年2月に取材した時点では、そのような構想はなく、「シェルター関しては国の方針が定まらない限り、前に進めない」というような状況だったが、そこから一歩前進したものの、まだ暗中模索状態のようだ。
かねてより日本国内におけるシェルターの必要性が指摘されている。地下埋没型シェルターは地震にも有用だ。日本は世界唯一の被爆国であり、ロシアや北朝鮮、中国という核保有国に囲まれているにも関わらず、シェルターの普及率はわずか0・02%だ 世界に目を転じれば、スイスやイスラエルが100%、ノルウェーも98%、アメリカは85%、ロシアは78%、イギリスは67%。日本の普及率は突出して低く、富裕層が家庭用に購入する程度だ。 (日本核シェルター協会の調査データ)。というのもシェルターは個人で購入するには機種にもよるが高額で、地下埋没型は1000万円を超える。
自民党の石破茂元防衛大臣によると、国家中枢機関施設でも「防衛庁と首相官邸にしかシェルターが整備されていない」という。 石破氏は20年前より日本国内におけるシェルターの必要性を指摘してきたが、国会で「票にならない」テーマは後回しにされるため、議論が進まなかった。
また、複数のシェルター販売会社に取材したところ、シェルター内に必須なCBRN(化学兵器、細菌兵器、放射性物質、核兵器)から身を守るための空気ろ過装置について、国内の多くのシェルター販売会社がイスラエル製のものに、一部はスイス製のものに頼っていて、ほぼ国産の空気ろ過装置の製造がないという。つまり、戦争が勃発した際には流通ルートが遮断されるリスクがある。加えて円安が急速に進行しているため、新たに空気ろ過装置を導入するとなると、費用がかさんでしまう。
混沌とする国際情勢に首都直下型地震のリスクも指摘されているが、果たして東京都は都民の命を守るシェルター整備に向けて具体的な政策を実施できるのか。
(ジャーナリスト・深月ユリア)