ドラマ化経験の重鎮漫画家「芦原さんの拘りを承諾したことに問題」 出版社とテレビ局は「WIN WIN」指摘
「ボーイフレンド」「チェーザレ 破壊の創造者」などの作品で知られる漫画家・惣領冬実氏が12日までに、自身の公式サイトで「セクシー田中さん」問題についての思いを明かした。「実写化について思うこと」と題して、自身の作品「MARS」の実写化を例にした文書を掲載した。
「セクシー田中さん」の作者・芦原妃名子さんが急死したことについては「あまりにも重い結果を招いてしまったことを本当に残念に思っています。何故ここまで追い込まれなければならなかったのか、芦原さんの置かれた立場を想うと本当に胸が痛みます。」と吐露した。
「MARS」は2006年に台湾で「戦神 MARS」のタイトルで、16年には日本テレビ系で「MARS~ただ、君を愛してる~」としてドラマ化された。台湾版は「原作に忠実に創られていて逆に驚かされ」るほどだったが、日本版は「原作とは別物と言うほかない仕上りとなって」いたという。
「台本に修正を入れるたび、何故私の作品を実写化しようとしたのか謎に思うこともありました」と疑問がわくこともあった。制作サイドや出演者の熱意は感じる一方で「日本テレビサイドはまず芸能事務所の俳優、タレントの存在ありきで、それに適した原作を素材として引用しているだけのように私には感じられました。」と印象を明かした。
「人気のある演者と人気のある原作を組み合わせれば双方のファンとネームバリューで一定の数字は取れるはず、そこにエンタメ要素を増量すれば多少の改変があってもさらに数字は伸びるはず、それで視聴率も取れて原作本も売れればお互いWINWINで結果オーライ的な発想が根底にあるからではないかと思われます。」と“改変”が行われる流れを分析。「セクシー田中さん」の場合には、原作に忠実であることを望んでいた芦原さんの「拘りをテレビ局が承諾したことに大きな問題があると思います。」と指摘した。テレビ局の意向をくんだ脚本家と、忠実なものを求めた原作者について「実はどちらも被害者だったのではないかと思えてくるのです。」とした。
テレビ局に対しては「もともと原作者が加筆修正すると言っていたのだから、脚本家にテコ入れさせた物を原作者の気が済むまで手直しさせてやった我々に落ち度はない、と言う理論なのでしょうか。」。小学館に対しても「漫画家一人の命よりもこれからのテレビ局との関係の方が大事ということなのでしょうか。」と厳しく指摘。編集者が会社員であるということも理解した上で「作品を作っていく上で作家との信頼関係はやはり非常に重要な要素だと思われますので、出来る限りのケアをしてあげられていたならと本当に悔やまれます。」とつづった。最後は「謹んで芦原妃名子さんのご冥福をお祈りいたします。」と悼んだ。
(よろず~ニュース編集部)