メッセ黒田「ブギウギ」小雪の目力にビビりNG3回 芸歴33年「イジリ方もセンス」芸人として持論語る
ベテラン漫才コンビ・メッセンジャーの黒田有(54)がこのほど、よろず~ニュースの取材に応じた。ピンとしても2月23日に東京・ヨシモト∞ホールでオズワルド・伊藤とのトークライブ「黒田・伊藤の喫煙所」を開催するなど、舞台、テレビ、ラジオ、ネットなど幅広く活動中。現在放送中のNHK朝ドラ「ブギウギ」では役者として注目を集めた。朝ドラでのつらかったこと、お笑いの道に入ったきっかけ、プライベート、今後の目標などを語った。
「ブギウギ」では村山興業東京支社長・坂口を演じる。演技は評判を呼び「ありがたいことです」と感謝しながらも、一番、つらかったシーンとして小雪が演じる村山興業の社長・村山トミに怒られる場面を挙げた。
小雪と初対面のあいさつを終えて、いきなりの撮影。大女優の迫力に圧倒された。「目力がすごくて、緊張するんですよね。僕がすっごい長いセリフで、小雪さんが(机を手で)バーンって叩くんですが、3回くらいNG出しまして。小雪さん、結構、痛いんやろうなあと」。全身から冷や汗が流れたという。「SNSでは『トミさんにおびえているみたいで、すごい目が泳いでいるシーンはさすがの演技ですね』とみたいことを書かれたのですけど、がちがちにホンマにビビっていたんですから」と苦笑いだった。
2019年に19歳下の一般女性と結婚。現在は淡路島の別荘から仕事場に通うことがほとんどで、午後11時に寝て午前5時に起きる生活を送っている。芸人仲間と飲むことはほとんどなくなったが、淡路島の地元住民との交流が増えた。きっかけはゴミ出しのときに、漁師という大柄の若者から声をかけられ、地元の風習で魚をお裾分けしてもらったことだった。「時間があるんだったら、ウチに遊びにおいでといって」と誘い、徐々に人の輪が広がった。「地の人間じゃないし、コソコソ生きなアカンなと思っていたんですよ。ラッキーでしたね」と不思議な縁を喜んだ。
「芸人だけでしゃべると、自分の引き出しが芸人の内輪話ばっかりになるんですよね」。漁師の事情や苦労…。芸能界だけでは知ることができなかった話を聞くことは、とても新鮮だった。「そういう異業種の人と話をさせてもらうのが、最近楽しくなって。それが、トークライブやラジオで役立っています」。自分の世界が広がり、仕事にもつながっている。
芸人としてのキャリアは30年を超えた。高校卒業後、料理の道に進んだが、しばらくすると料理人としての将来に不安を覚えた。ただ、もともとしゃべり好き。店ではカウンター越しに客を笑わせ、小遣いをもらうなど人気があった。「一発当てるんやったら、芸人しかないんじゃないか」と1991年にNSCの門を叩いた。
当時、漫才の授業を受けるためにはコンビを組む必要があった。たまたま隣にいて別のコンビを解散したばかりのあいはら雅一とメッセンジャーを結成。黒田が入学前から準備していた自作の台本で漫才を披露すると高い評価を得た。「褒められましてね。僕は声が低く、彼は声が高かったので、声の波長が合うとか言われて。NSCの頃から仕事がありましたもん」と振り返る。
「貧乏人のイメージが強いですけど、ずっと仕事は途切れんかったんですよ。事件の時の空白はありますけど、うまいこと仕事をやらせていただいています」。飲食店でのトラブルによる謹慎期間もあったが、第一線で活躍を続けている。「ある程度の年齢になったら、芸人はいじられなアカンと思うんです。『あの人怖いから、これは言えない』とか、その人が出てきたら後輩が持ち上げるとか…。見ている方が面白くないんですよ」とベテランになった自分の立ち位置を考えている。
以前、テレビで共演する先輩の東野幸治から「お前は仕事が来るから、後輩にも先輩にもいじられるような芸人を目指せ」とアドバイスを受けた。「『怖いというイメージが入っちゃうと、それはもう仕事につながらへんよ』みたいなことも言われて。それは守っていますし、変なプライドの鎧を外したら、楽になりましたね」と笑った。
若手の頃に可愛がっていた千鳥、かまいたち、ダイアンらが大活躍している。「そういう力を持った後輩らがいっぱい、いますけど『黒田さんとおったらオモロイわ』と言われる風にとは思っています。俺が!というオーラを出さずに、彼らがおいしいように(自分を)オモチャにしてくれたらいいし。イジリ方もセンスなんですよ。後輩でも売れているヤツはうまいです。どっちも気持ち良く突っ込める」と語った。
イジリはお互いの信頼関係も必要だという。「バカにしているのか、愛があって仲良くしたいためのひとつの投げ言葉か。そこは自分も気を付けなければいけないと思ってます。なんぼ言ったかって見下していると良くないので。隠していてもバレちゃいます。だから、本当に愛情があって、コミュニケーションが取れてなければ」。気心が知れているからこそ、そのやりとりから笑いが生まれる。
ピンとしての活動は多いが、メッセンジャーとしての思いもある。ふとしたきっかけで組んだコンビがメキメキと頭角を現し、2007年に「上方漫才大賞」大賞を受賞するなど、実力派に成長。「テレビで漫才をしなくなったんですけど、テレビ芸と舞台芸って違うもんやと気づいて。僕らコンビは舞台を大事にしたいので。お互いに飽きないようなことをしていきたいですね」と舞台にこだわりを持っている。
個人としての目標も挙げる。「とりあえずは60歳まで走り切りたい。やれる仕事はやっていきたいですね。『ブギウギ』もそうですけど、去年あたりから仕事の幅も広がりましたので。年齢的にしんどいので仕事を選ばせてもらいますけど、自分じゃなかったらアカンっていう仕事があるなら、自分の中で切磋琢磨してありがたく受けようと思います」と意欲的。これからも活躍の場を求め続ける。
◆黒田有(くろだ・たもつ)1970年1月29日生まれ、54歳。大阪府東大阪市出身。NSC大阪校10期生。1991年4月にあいはらと「メッセンジャー」を結成。2007年「上方漫才大賞」大賞をはじめ、数々の賞を受賞するなど実力派漫才コンビとして活躍。ピンとしても舞台、テレビ、ラジオ、YouTube、SNSなど幅広く活動している。
(よろず~ニュース・中江 寿)