映画「デデデデ」原作者・浅野いにお氏「漫画の映像化は本当にいろんなことがある」あの、幾田りらに感謝
劇場版アニメ「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」(アニメーションディレクター・黒川智之、前章3月22日公開、後章4月19日公開)の完成披露舞台挨拶が26日、東京・有楽町朝日ホールで行われた。漫画家の浅野いにお氏は主演の幾田りら、あのを絶賛し、原作者としての思いを赤裸々に語った。
あのは中川凰蘭役で声優に初挑戦。YOASOBIのボーカルikuraとしても活躍する幾田りらは、小山門出を演じる。浅野氏は二人と一緒に登壇したイソベやんの着ぐるみを脱ぎ捨て、姿を見せるサプライズで登場した。
ファンの間では「デデデデ」の通称で知られる同作。浅野氏の作品では初のアニメ化で、6年ほど前に打診を受け「僕はひねくれ者でニッチな作品が多い中で、デデデデはまっすぐなメジャーな感じなので、断ったら生涯アニメ化に関わることがないと思い、即答でお願いしますとなりました」と経緯を説明。声優陣の選出、企画会議、作画チェックなど全制作過程に直接関わった。
あの、幾田の主演は2年半ほど前に決定。浅野氏は「比較的難しいであろう凰蘭の役は、あのちゃんのテストをしたときに現場の空気が一変して、僕の中ではその段階で確定だった」とまず決定。一方の門出役は「普通の女の子である門出役の人選は難しくないと思ったが、普通でありながらあのちゃんの横に並んでバランスのいい人が誰なのと、暗礁に乗り上げかけた」と苦戦した。ディレクターから幾田りらを提案され、自身も納得して「原作者特権で」とオファーを出し、幾田から快諾された。
芸能界のビッグネームに成長した両者。浅野氏は「すごく恵まれたキャスティングです。あのちゃんのオーディションの時は、ここまで有名になるとは思わなかった。幾田さんも決まった後にYOASOBIの曲が有名になった。映画業界から、どうやったらこういうキャスティングができるの?と聞かれるらしいのですが、巡り会い、たまたまなんですよ」と、しみじみと語った。
あのは前章の主題歌「絶絶絶絶対聖域」で作詞(作曲はTK=凛として時雨)、幾田は後章の主題歌「青春謳歌」で作詞作曲を担当。「絶絶絶絶対聖域」ではあのの提案で幾田のデスボイスが曲中に添えられ、「青春謳歌」では幾田の提案で二人の何気ない会話がサンプリングされた。浅野氏は「二人ともニーズを分かっていて完璧でした。制作チームから特にお願いしていないのに」とうれしそうに語った。
最後に幾田は「クソヤバイ作品になっています」、あのは「とても皆さんの反応が楽しみです」とあいさつすると、浅野氏は「ちょっと長くなります」と前置きした上で、原作者としての思いを口にした。
「原作者と映像化の関係性は難しいものです。ノータッチでできるんであればいいなと思っていたんですが、蓋を開けてみると、コンセプト会議から脚本会議、配役会議、アフレコ、そして曲、全てに関わってしまう状態でした」
特に作画は前章のみでも100カット以上のリテイクを要請。自らアニメデータに直接修正、作画した箇所もあった。「アニメーション作業に片足以上踏み込んでしまった自分から言わせてもらいますと、アニメは関わる人数も多く、期間、予算もある。限られたリソースの中で、全員が納得をするクオリティを作るのは、かなり難しいものだと実感しました。今回は完成披露試写会と銘打っておりますが、実はまだリテイク作業が、並行して進んでいます。来月の本公開までに結構重要なシーンも含めて、差し替わる予定になっています」と明かした。
そして映画会社、アニメ制作関係者への感謝を述べ「何より主演のあのちゃん、幾田さんは本当に素晴らしい演技をしていただきました。お二人は絶対の存在なんだなと思いました」と改めて主演の両者を称賛。「最後に一言だけ言わせてください。漫画原作の映像化というのは、本当にいろんなことがあります。でも、これはお祭りですから、どうか皆さん楽しんでください。今日はどうもありがとうございました」と客席のファンに向け感謝を伝えていた。
(よろず~ニュース・山本 鋼平)