クロード・チアリの娘、電車の英語アナウンス50路線以上で活躍!「高田馬場」の読み方は?7日に浅草登場

 コロナ禍による規制が緩和された昨今、インバウンドで公共交通機関を利用する外国人乗客が急増している。そこで重要になるのが電車内の英語アナウンス。“声の主”はどのような思いで取り組んでいるのか。約四半世紀にわたって50路線以上で車内自動放送を担当してきた声優でタレントのクリステル・チアリ(48)に話を聞いた。

 クリステルは世界的なギタリストであるクロード・チアリの長女。日仏英のトリリンガルだが、「尼崎生まれの西宮育ち、学校は神戸のインターナショナルスクール、パワースポットは甲子園球場」という生粋の兵庫県人だ。

 父はフランス人(1985年に日本帰化)だが、家庭内の共通語は関西弁。神戸のFM局など関西で活動後、東京に拠点を移し、98年から3年間、NHK教育(Eテレ)の子ども向け英会話番組「英語であそぼ」に出演。「クリスおねえさん」の愛称で親しまれた。

 同番組を東急電鉄の幹部が見ていたことからオファーがあり、2000年に東急目黒線の英語アナウンスを担当。以降、JR東日本、東京メトロ、東武、西武、京王、小田急、京成、ゆりかもめ、横浜市営地下鉄などの首都圏から、仙台市営地下鉄、愛知環状鉄道、南海、JR四国、JR九州、西鉄など全国でクリステルの声が流れてきた。

 「今もJRをはじめ、東急、小田急、西武などなど、数え切れないくらい、たくさんしゃべらせていただいてます。関西では、神戸市営地下鉄の海岸線、京阪石清水八幡宮参道ケーブルもやらせてもらってます。うれしかったのは、昨年、世界水泳の実況で福岡に行った時、電車(福岡市営地下鉄と西鉄)に乗ったら自分の声が聞こえてきたこと。知らない土地でほっとしました」

 駅名を日本語読みするか、英語風にアレンジして読むか。悩ましい選択がある。クリステルは「日本語を大切にしたい」という。

 「日本におるんやったら日本語しゃべりましょ…と私の中では思うんですよ。郷に入れば郷に従えじゃないですけど、そこは大事にしなきゃと。最初の東急、その次の小田急ロマンスカーは日本語読みでしたが、その後のJRでは『英語読みで』と言われ、私には抵抗があった。高田馬場は『タカダノババ』やろと。『ターカダノバーバ』みたいなイメージで最初やってみたんですけど、自分の中では違和感があって。『なんで、日本語の駅名を英語で言わなアカンねん』と。でも、声優は出されたものを読むのが仕事ですから…。それから徐々に変わってきて、今はぼぼ日本語読みになってます。日本語の響きを大事にしたいです」

 発音にもこだわってきた。

 「収録する時に『早口でいいです。英語が分かる人に分かればいい。ネイティブでいいので』と言われたこともあったんですけど、“ネイティブ”って何を指すのかと。(英語の)ネイティブいうたらイギリスしかないやん…となりますが、マジョリティはアメリカン・イングリッシュやし、オーストラリアやニュージーランドとかも全部違う。それより、日本に来ている英語圏ではない国の方たちが理解できなかったら意味がない。日本語が分からなくて、英語はなんとなく分かるという方たちが私のアナウンスを聞いて『次はここで乗り換えたらええんやな』と分かってもらえるようにしゃべらな意味がない。声には『言霊(ことだま)』が宿ります。電車でアナウンスを聞いた時に、それが自然とヒーリング(癒し)になってくれたらうれしい」

 7日、リングアナウンサーを務めるエンタメ系団体「怪獣プロレス」の第3弾興行(東京・浅草花劇場)で東京メトロ・銀座線をテーマに「声の技」を披露する。浅草、神田、銀座のご当地プロレス代表者3人による「チーム銀座線トリオ」が結成され、いずれも銀座線の駅名であることからクリステルがアナウンスで絡むのだ。「楽しみです。銀座線は90周年(17年)で他の方に変わりましたが、私が担当していた時の懐かしいバージョンで読みますので、今との違いを楽しんでいただければ」。浅草のリングで7年ぶりの復活となる。

 その活動は幅広い。歌手活動のほか、女性芸人・ゆっき~と漫才コンビ「ハイカロリーズ」を結成し、昨年のM-1グランプリで3回戦進出。4月末から神戸・新開地の喜楽館、大阪・天満天神繁昌亭に出演し、M-1にも再挑戦する。スポーツ系では21年の東京五輪でトライアスロンや野球などのアナウンスを担当。今年5月に神戸で開催される世界パラ陸上競技選手権大会も担当予定だ。さらに、オートバイの全日本選手権など様々なカテゴリーのレースを配信する「motoバトルLIVE」で今春からMCと実況を日本語と英語で担当。自身もバイカーで、「プロレスとバイクが自分の軸」と話す。

 「父も2月で80歳になりました。そのDNAは私の指先にまでは伝わらなかったか、ギターは上手に弾けませんが、『声の仕事』はできた。電車のアナウンスもその1つ。TikTokとYouTubeで毎日、『一日一駅』を自分で編集して上げてます。今は東海道線を沼津方面に下ってます。これからも毎日続けようと思っています」

 「声」を通してマルチな才能を発揮している。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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