粗品に直撃「お金のこと、どう考えてる?」 理路整然と語った金銭論「ギャンブルが一番健康的。脳汁が出る」
ギャンブル、借金、さらに約2400万円の巨額寄付と、お金にまつわる話題に事欠かないお笑いコンビ・霜降り明星の粗品がこのほど、よろず~ニュースの取材に応じ、金銭に対する独自の信念を語った。
粗品のYouTubeチャンネルでは競馬、ボートレースなどの公営ギャンブル、さらにパチンコなどのガチンコ勝負動画を多数公開。凡人にはできない買い方、破滅的な大敗を喫したかと思えば、今年1月6日の中央競馬では約2400万円の馬券を的中させ、さらに全額を能登半島地震の被災者に寄付。大きな反響を集めた。「マネーエンタテインメント」という言葉が生まれたように、芸人として新境地を切り開いた感もある。
そんな粗品に単刀直入、「お金のことを、どう考えているんですか?」と質問。吉本興業の給料事情、話題になった2400万円寄付についても言及。尋常ではない金銭感覚について、理路整然と落ち着いて語るところには、芸人のすごみすらを感じさせた。
「ギャンブルで給料を全部使うことは、借金もしてるんですけど、何とも思ってないというか、もう無関心ですよね。お金を好きかと思いきや、実はどうでもいいと思っている。
もちろん生きていけるだけのお金は必要ですけど、それは借金で何とかなる。この間も電気が止まりましたけど、人に借りて何とかできた。仕事はしているから、給料日に返せばいいじゃないか、という感覚です。そうやって生きていると、お金はもうどうでもいいんですよ、正直。
結構芸人が『吉本は給料が安い』とか、言うじゃないですか。全然安くないし、僕は大満足で、なんやったら僕みたいなもんがこんな金もらってもしゃあないな、と。どうせギャンブルに使うから。
そんな発想で2400万円を寄付するという、派手な使い方をしただけです。あれは自分よりお金が必要な人がおる、というのが目に見えた瞬間だったので寄付しました。基本的には金に執着がなさすぎるだけ。どうでもいいと思っています。
お金が何千万入るとかへの執着はないんですけど、マイナスにはあります。『お金ないの嫌やな』とは思います。それがないと楽しくない。よく言われるんですよ。『負けにいってるんやろ』とか『負けないと楽しくないんやろ』とか。ホンマにその通りで、お金がないとか環境が逼迫しないと、何か人生楽しくないなって思ったんです」
粗品は高校時代から「R-1ぐらんぷり(現Rー1グランプリ)」に出場し、ハイスクールマンザイでも活躍。大学進学後に吉本興業に所属し、19歳で関西の年末恒例特番「オールザッツ漫才2012」のFootcutバトルにおいて、最年少初出場と優勝を成し遂げた。後にせいやと霜降り明星を結成し、18年の「M-1グランプリ」に優勝。翌年は個人で「R-1」を制し2冠を達成。一気にブレークを果たした。ブレーク前、ギャンブルに魅了されるきっかけがあった。
「20歳を超えてからギャンブルを一通りやり出した当時、お給料が月3万円から5万円で、バイト代を入れて7万円。初めてやったパチンコで、7万円を全部なくしたとき、えげつない背徳感があったんですよね。俺はこんな人間になってしまったんだ、と。
初めて消費者金融の門を叩いて、お金を借りたとき、弱冠20歳の若者がエグいことしてるな、お母さんに怒られる、ヤバい死ぬんかな俺、みたいに思いました。借金がマイナスに、ダーティーに描かれるドラマ、映画が大量にあるじゃないですか。
どうなってしまうんやろうって思ったんですけど、その時にいや待てよ、と。これ犯罪じゃないよな、と気づいたんですよね。
未来の自分が金を稼いでいる、今よりも稼ぎ続けるんだから、今持っている分は使わないと損だろう。ポリシーとしては未来の自分への投資、未来の自分からの借金。そのマインドです。今も結構稼ぐようになったけど全部使っています」
粗品は大の「カイジ」ファン。5月12日まで開催中の「逆境回顧録 大カイジ展」(東京ドームシティ・ギャラリー アーモ)のオープニングセレモニーでは、作者の福本伸行氏と初対面し、感激と興奮を隠さなかった。原画とともに「限定ジャンケン」「鉄骨渡り」「焼き土下座」「沼」などをモチーフとしたフォトスポットが満載。福本氏は企画に直接関わっていないことを知らされた粗品は、「考えたのはオモロイ人ですね」と感心。福本氏から創作裏話をたっぷり引き出した。今回の取材中も「本当に楽しかったですね」と振り返ったほどだった。
そんな福本氏の「カイジ」に並ぶ代表作、「アカギ」の金銭哲学からも、粗品は影響を受けたという。巨額の金、命のやり取りもいとわない天才雀士アカギ(赤木しげる)の勝負が描かれた名作。「アカギが1回ギャンブルの世界から足を洗って工場で働いてるとき、先輩のイカサマ麻雀でたかられる後輩の敵を討って、お金を手にした時、おもちゃを見るような目でお金を見ていた場面。そういう金に執着のないところ。そこはアカギへの憧れがありそうですね」と、作品への思いを口にした。
世間では投資がもてはやされ、芸人でも投資を学び、堅実にお金を増やそうという機運に対しても背を向ける。「しょうもない芸人やなと思います。株、FXに興味はありますが、『カイジ』の世界のようなパチンコ、そして競馬という王道がある。ギャンブルとして煙たがられるものこそ、面白いですね。(投資を)失敗してほしいですね芸人なら」。笑いに昇華される大敗の価値を口にした。
粗品は芸人の四大欲望として「食におぼれる」「色におぼれる」「酒におぼれる」「金・ギャンブルにおぼれる」を挙げた上で、持論を語った。そこには「マネーエンタテインメント」の行方、芸人としての自負心をも垣間見せたように感じた。
「ギャンブルが一番健康的。最高だと思います。ギャンブルだけが、言葉で形容できないエグみがある。脳汁が出る。
M-1を優勝した後、ちょっとギャンブル系のものまねをした時、今まで窮屈やったギャンブラー層の熱い応援と反響を感じたんですよ。徐々にやっていって、ネットでめっちゃ数字が取れるようになった。それにテレビとか他媒体が気づいて、ギャンブル系のクズ芸人ブームになりました。
やっぱりね、ギャンブルというのは芸としても今や王道です。それでいうと、正直今、まがい物のギャンブル芸人とか、まがい物のクズ芸人が増えすぎている。そいつらを全員、ぶっ倒さなあかんなと思ってます」
粗品は終始、自己責任、個人としてのギャンブル論、金銭論を語り続けた。この考えを一般化させるつもりは一切なさそうだ。孤高の芸人としての誇りすらを感じさせ、熱いギャンブル愛を隠さなかった。
(よろず~ニュース・山本 鋼平)