「けいおん!」一筋の“痛車道”に新展開!平沢唯と「ぼざろ」後藤ひとりがコラボ「バンドアニメ熱が再燃」
ゴールデンウィーク幕開けを飾った「ニコニコ超会議2024」(リアル開催4月27日・28日、千葉・幕張メッセ)で展開された「超痛車天国」ゾーン。今年もアニメ、ゲームなどをモチーフとした「痛車」が会場を華やかに彩った。その中には痛車歴約15年というベテラン、よったれさんの姿、手がけた痛車があった。
よったれさんの作品は人気アニメ「けいおん!」をモチーフとすること、「手切りカッティング」という手法を用いることが特徴だ。
しかし今回は、作品の顔とも言えるボンネットで「けいおん!」平沢唯と、2022年に放送され大人気となったアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」後藤ひとり、両アニメの主人公が“共演”を果たした。ともに高校生のバンド活動がテーマのアニメで強く惹かれたという。
「僕が痛車を始めたのは『けいおん!』にハマったからです。それからずっと『けいおん!』一筋でしたが、『ぼっち・ざ・ろっく!』で久しぶりにバンドアニメ熱が再燃しました。芳文社の同じ系列の雑誌で、何か共通するものを感じたのかもしれません」
主人公は明るい平沢唯、屈折を抱えた後藤ひとりと、そのキャラクターは異なるが、ともにバンドメンバーとの絆、演奏への本気さ、そしてゆるい日常生活が丁寧に描かれる。1996年式のホンダ・インテグラタイプRに描かれた作品名「『けいおん!』放課後ティータイム&『ぼっち・ざ・ろっく!』結束バンド」。車の両サイド、バックドア、内装は「けいおん」一色だが、よったれさんにとって新たな可能性を示す作品となった。
よったれさんは痛車以前から車のカスタムを趣味としていたが、「けいおん!」に心を奪われ、ボンネットの一部にシルバーのステッカーでキャラクターを形取った装飾が、痛車歴の始まり。ほどなく1色では満足できないようになり、より色鮮やかに、製作箇所も車全体へと広がっていった。
「イベントで驚いてもらえるとうれしいんですよね。妻からは『もっとできるでしょ』という感じで背中を押されて、のめり込んでいきました。途中でしんどいな、と思うこともありましたが、やめられませんでした。驚いてもらえると、今でもうれしいです」
より高みを目指すことが、時に苦しみとなることは、どのジャンルのマニアにも共通する悩みだろう。ただ、妻の理解を得られたことは幸運だったのかもしれない。
もう一つの作品の特徴は「手切りカッティング」という製作手法。印刷したステッカーを一切使用しない。今作では青のシートで車全体をラッピング。その後、キャラクター及び背景を「切り絵」と同じ要領で、各色のカッティングシートをデザインナイフで1枚1枚切り出し、重ねて貼り合わせて絵柄を構成する。凝視すると貼り合わせたシートの段差は明らかだ。車両の外装、内装カスタムは友人の力も借りながら、試行錯誤し仕上げた。「業者に頼むよりかなり経費を抑えられます。ただ、手間は圧倒的にかかります」と苦笑した。その技術は職人級で、痛車界での地位を築いている。
この15年で痛車を取り巻く状況は変わった。「昔は変な目で見られることもありましたが、最近はなくなってきましたね」。政府のクールジャパン戦略が始まった頃から、風向きが変わってきたという。近年は愛好者と作品を鑑賞するファンの人気が安定し、痛車というジャンルの成熟を感じている。今後もイベントには毎月のように参加する予定。「デザイン、ロゴ製作、貼り込みなどDIY作業でのこだわりはこれからも続けたいです。会場で『印刷とは違うの?』と驚かれる瞬間が楽しいですね」と語った。
夫婦で仲良く20年、痛車となってからは15年乗り続ける白のインテグラ。この“キャンパス”に描かれる新しい作品が楽しみだ。
(よろず~ニュース・山本 鋼平)