竹中直人が明かす「傷天」俳優の素顔 岸田今日子さんの天然ボケと存在感 モノマネ電話で桃井かおりは?
“ショーケン”こと萩原健一(2019年死去、享年68)と水谷豊(71)の名コンビが躍動した伝説のテレビドラマ「傷だらけの天使」(以下「傷天」)が放送開始50周年を迎え、その節目に出版された『永遠なる「傷だらけの天使」』(集英社新書)の刊行記念トークイベントが都内で行われた。リアルタイム世代の「傷天ファン」である俳優・映画監督の竹中直人(68)が萩原への思いを語る一方、同作に出演した俳優とのエピソードも明かした。竹中が書き下ろした自伝的エッセイ集「なんだか今日もダメみたい」(筑摩書房)の発売(25日)を前に、その一部を紹介する。(文中一部敬称略)
「傷天」(全26作)は1974年10月-75年3月に日本テレビ系で放送。オサム(萩原)とアキラ(水谷)に仕事をさせる探偵事務所「綾部情報社」の社長・綾部貴子役をミステリアスに演じた岸田今日子(06年死去、享年76)とは自身が主宰した「竹中直人の会」第8回公演「隠れる女」(00年12月、東京・本多劇場)で舞台共演していた。
「岩松了の作演出で、小泉今日子と岸田今日子の“Wキョンキョン”をゲストに迎えた芝居でした。岸田さんは最高の女優さんですが、なかなかセリフを覚えない。僕が『あと1週間で本番の幕が開くので、セリフを覚えてください』とお願いしたら、岸田さんは『毎日、稽古、稽古で、家に帰ったらバタンキューなのよ。でも、今日から必ずベッドで台本読んでから寝るわね。お疲れ様~」と帰って行かれた。ところが、その場に誰かの台本が置いてあり、見ると『岸田今日子』と書いてある。お忘れになっていた(笑)。でも、最終的には岸田さんの芝居が最高に面白かったんです。セリフどうこうより、声の音色とか存在感、醸し出す空気が圧倒的にすごかった」
情報社で綾部社長の片腕となる辰巳五郎役の岸田森(しん)の演技にも「しびれまくった」という。岸田森は82年に43歳の若さで病死したため、83年にデビューした竹中と共演する機会はなかったが、「子どもの頃からの憧れでした。岸田森さんを一番強く意識したのは『帰ってきたウルトラマン』(TBS系で71-72年放送)。ウルトラシリーズの中でも、ちょっと暗いところもあり、圧倒的に好きな作品でした」と振り返る。
水谷との“2代にわたる縁”もあった。竹中は「長谷川和彦監督の映画『青春の殺人者』(76年)の水谷さんには(共演の)原田美枝子さん、市原悦子さんと共にガツンとやられちゃいました。でも(俳優として)直接の共演はないんです。(テレビ朝日系ドラマ)『相棒』には出演させていただきましたが、水谷さんと同じ出番がなかった。ただ、行ったお店で、水谷さんが娘さん(趣里)、奧さん(伊藤蘭)と一緒にいらした時に偶然お会いしたことがあった。趣里さんは昨年公開された自分の作品(監督した10本目の映画『零落』)に出演していただいたので、不思議な感覚です」と明かした。
映画「青春の蹉跌」(74年)、日本テレビ系ドラマ「前略おふくろ様」シリーズ(75-77年)などで萩原と共演した桃井かおりは「傷天」の第14話「母のない子に浜千鳥を」(75年1月放送)にゲスト出演している。
竹中は「かおりさんとは舞台で2本共演しました。電話して(松田優作の声色で)『おお、久しぶりだな』なんてわざとやったら、かおりさんに『優作…。竹中、しばらく、優作のままでしゃべって』と言われました」と、亡き盟友への思いの深さが伝わる逸話を披露した。
竹中は母校・多摩美大の客員教授も務めるアーティスト。24日から東京・銀座のギャラリー「巷房」で自作の絵などを披露する個展「なんだか今日はだめみたい」を7月6日まで開催する。今回、「傷天」書籍の著者・山本俊輔、佐藤洋笑の両氏と出演したイベントの動画配信アーカイブは25日まで購入&視聴可能。新刊のエッセイと共に、マルチな才能を発揮する竹中の「表現」への思いが多ジャンルで垣間見られる。
(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)