進化し続けるシスターフッド映画から見る男女平等とは #MeToo運動後の変化

 女性が活躍するアクション映画が、今、増えている。

 過去を振り返るとヒーローものの主人公は男性が多かった。アクション映画においても主人公は男性が多く、女性が守られる側の物語が量産されてきた。この構造を変えたのが#MeToo運動からの映画製作で、マーベルやDCなどのアメコミヒーローでも、ハーレイ・クインを筆頭にキャプテン・マーベルやワンダーウーマンが主人公となる作品も製作されていった。 

 ただし過去にも女性のアクション作品は存在する。例えばTVシリーズ「チャーリーズ・エンジェル」(1976~)は三人の女性探偵が活躍するアクションドラマであり、2000年には映画化もされてPart2まで製作、2019年にまた新たなキャストで映画化された。日本においても富司純子の「緋牡丹博徒」(1968)シリーズや、梶芽衣子は「女囚さそり」(1972)、「修羅雪姫」(1973)シリーズ他多くの作品が製作された。 

 しかし、2017年に大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインによるセクシャルハラスメントが告発されてからの#MeToo運動後の女性主人公の物語には変化が見える。それは「シスターフッド」という言葉通り「女性同士の連帯」を意味する女同士の友情と、セクシーでなくとも主人公になれ、彼女達が肌を露出しない映画製作だ。 

 このスタイルは日本映画でも製作され、阪元裕吾監督による女性バディモノ「ベイビーわるきゅーれ」(2021)では、ウィンドブレイカーで本格的アクションを披露し、見事ヒットを記録。最新作となる第三弾「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」は9月27日に公開される。またアメリカ映画「ガンパウダー・ミルクシェイク」(2021)でもスカジャンにジャージという女性主人公が、ミシェル・ヨー他、目上の女優達とタッグを組みアクションを披露した。更にはアジア系のアクション女優であるミシェル・ヨーが主演となり、仕事に家事に奮闘する中年女性が、ある日突然、マルチバースの世界に飛び込み、カンフーマスターとなる「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(2022)は、アカデミー賞作品賞、主演女優賞、監督賞含む7部門を受賞した。若くなかろうが、絶世の美女でなかろうが、セクシーな衣装でなかろうが、面白ければ評価されるのだ。 

 そんな中、イギリスのシスターフッド映画「ポライト・ソサエティ」が8月23日に日本公開される。物語の主人公は、スタントマンを夢見るパキスタン系イギリス人の高校生リア。彼女は、大好きな姉が親にセッティングされたパーティーで出会った男性と結婚するというので、親友の力を借りて姉のフィアンセの家族を捜査した結果、実は大きな陰謀が隠されていたというアクション映画だ。 

 そんな本作にはアジア系武術へのリスペクトが散りばめられている。冒頭はリアがカンフーレッスンを受けているシーンから始まり、あるシーンでは1970年に発売された浅川マキの「ちっちゃな時から」が流れるのだが、これは日本人なら嬉しい遊び心だ。しかもリアと親友達は学校では処女グループと言われる冴えないメンバー。実はこのキャラクターは、パキスタン系イギリス人監督のニダ・マンズールによる強い思いから形成されている。監督いわく、物語の多くは白人が主人公で、南アジア系の女の子はその友人役になるのが通常だそう。そこで彼女達が活躍するアクションヒーローものを作ろうと決心した監督は、自身の「好き」を全て詰め込んだ映画を完成させた。 

 お陰でボリウッド映画が大好きな主人公という設定からインドのクラシックな民族衣装での華やかなアクションも楽しめる新しいシスターフッド映画になっている。ちなみにニダ・マンズール監督の才能に目をつけた本作のプロデューサーのひとりが監督と出会ったのは2016年。この後、イギリスの有名映画製作会社ワーキングタイトルが参加していると考えると、#MeToo運動後の「今」だから映画化できたかも知れない意義深い作品だ。

(映画コメンテイター・伊藤さとり)

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