「大都会」「探偵物語」「プロハンター」伝説的プロデューサーが死去、87歳“火曜夜9時”傑作ドラマ生んだ

 1970年代から80年代にかけ、昭和期を代表するアクションドラマを数多く送り出したテレビプロデューサーの山口剛氏が11日に都内の自宅で死去したことが14日までに分かった。87歳だった。

 関係者によると、今年8月、在住する東京・杉並区の検診でがんが発見され、「既に積極的な治療の難しい段階である」との診断を受け、自宅療養中だったという。葬儀は15日に東京・渋谷区の渋谷教会礼拝堂で行われる。

 山口氏は1937年に石川県金沢市で生まれ、旧満州(現中国東北地方)などを経て、中学2年時に愛媛県松山市から東京に転居。早大卒業後、61年に日本テレビに入社。70年代前半にプロデューサーとして一本立ちし、「火曜の女シリーズ」や「太陽にほえろ!」などに携わった後、76年から79年まで3作が放映された石原裕次郎さんと渡哲也さん共演の「大都会」シリーズ以降は「火曜夜9時のドラマ枠」をほぼ一貫して手掛けた。

 この「大都会」シリーズをはじめ、加山雄三主演の「大追跡」(78年)、松田優作さん主演の「探偵物語」(79-80年)、渡瀬恒彦さん主演の「大激闘マッドポリス'80」(80年)、藤竜也と草刈正雄がコンビを組んだ「プロハンター」(81年)など、刑事や探偵を主役としたテレビ活劇が人気を博した。

 81年からは「火曜サスペンス劇場」をプロデュースし、海外ミステリーの翻案企画で、松田さん、寺尾聰、柴田恭兵らの主演ドラマを残した。さらに活躍の場を水曜に移すと「水曜グランドロマン」で純文学、文芸ドラマ系作品を手掛け、倉本聰脚本、実相寺昭雄さん演出のスペシャルドラマ「波の盆」は83年度の文化庁芸術祭大賞、第1回ATP賞グランプリ、第16回テレビ大賞優秀番組賞を受賞。92年に日本テレビ出版部門に異動後は外国映画やジャズに関する書籍を出版し、97年の定年退職後も海外映画の紹介や映画評などの仕事をフリーで続けた。

 書籍「NTV火曜9時 アクションドラマの世界『大都会』から『プロハンター』まで」(DU BOOKS、2015年刊)執筆のために山口氏を取材し、その証言を記した共著者の一人で、作家・映画監督の山本俊輔氏は当サイトの取材に対して「山口さんは早稲田大学でワセダミステリクラブの創設に関わり、『探偵物語』の原案担当でハードボイルド作家の小鷹信光氏らと交流を持ちます。手がけられたドラマ作品は後進のアクション系監督やシナリオライターたちに多大なる影響をもたらしました。また、“火サス”には大林宣彦監督の『麗猫伝説』や『可愛い悪魔』といった名作も残されています」と業績に付け加えた。

 その上で、山本氏は「(共著者)佐藤洋笑さんの紹介で、山口さんとは15年近くお付き合いさせていただきました。私の監督作『愛に渇く-thirst for love-』にも特別出演していただき、若い俳優たちに混じって楽しそうに演じられていました。飾らない気さくな人柄で親しまれ、83年から住む(杉並区の)阿佐ヶ谷では『剛(ごう)さん』と呼ばれ、行きつけの劇場や飲み屋・バーなどが多数存在していました。反権力で、熱烈な阪神ファンでもあった。出世も金も眼中になく、ただ好きなことだけを一生懸命、追求し続けてこられた」と振り返った。

 70年に結婚し、半世紀以上連れ添った妻・きみ子さんが22年8月に死去。その後も自立した一人暮らしを続けていたが、今夏のがん診断後、自宅療養中の今月11日午前10時38分に亡くなった。関係者に送られた葬儀の案内には「安らかな最期でした」と綴られていた。山本氏は「87歳は大往生だと思います。あの世でも楽しく過ごしてくださいね」と悼んだ。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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