MISIA「Everything」作曲家が能登半島地震の被災地に捧げた新譜、熊本でも被災体験、復興への「光」模索

 作曲家・ピアニスト・音楽プロデューサーの松本俊明が20日、10枚目のアルバム「レクイエムの森」をリリースする。昨年11月に石川県観光大使を委嘱されて迎えた今年元日の能登半島地震を受け、被災地に復興への祈りを捧げた作品だ。MISIAの「Everything」「明日へ」、AIの「One」、Crystal Kay×CHEMISTRYの「Two AsOne」など数多くのヒット曲を手掛けてきた松本が、よろず~ニュースの取材に対し、今作に込めた思いを語った。

 前作から5年ぶり、コロナ禍以降で初となるアルバム。収録された13曲は(1)「サフランの時刻」(2)「ゴンドラ漕ぎの夜」(3)「天動説の恋人たち」(4)「トレモロ」(5)「ピアソラの小指」(6)「海のカナリア」(7)「アスンシオンから来た少女」(8)「聖母たちの行進」(9)「rabiablanca~ラヴィア・ブランカ~」(10)「Noto」(11)「砂に描いた十字架」(12)「愛が二人を分かつまで」(13)「揺りかごをゆらす風」。全て歌詞のないインストゥルメンタル(器楽曲)だ。

 松本は「大切な人を亡くし、暗闇の中をさまよう中でも『光』を見つけてほしいという思いを込めて書きました」と語り、各曲には震災だけに限定されない普遍性がある。ただ、10曲目の「Noto」に関しては「能登」という地名をタイトルで示した通り、その背景には被災した若者との交流があった。

 「被災地である石川県の珠洲、七尾、輪島の高校生が大学受験のために金沢に避難してホテルや民泊で勉強して試験に臨むことを応援した時、17歳の男子生徒から『能登の海を見たことがありますか』と聞かれたんです。僕が『まだ行けてないです』と答えたら、彼は「僕の自慢の故郷・能登の海を必ず見に来てください』と言った、その目を見て、『こういう若者たちが将来の能登を担っていくのだな』と思えて、その子に『光』を見たんですよ。みんな明るくて屈託がなくて、力強くて。まだ復興は進んでいませんが、光はあると実感しました」

 「Noto」を聴いた。弦楽器と絡みながら、松本が繊細に奏でるピアノによって、陽光を照り返してキラキラと輝く美しい海がまぶたに浮かんだ。

 「どんなに悲しい曲でも救いがあり、逆に明るい曲でもどこかに影がある、その裏にあるヒダみたいなものを音楽にできたらなと。『能登というと暗い冬の海のイメージだったが、夏の海のように光や希望を感じる』とおっしゃる人もいて、文章では何も説明していないのに、音という空気の波動で人に伝わるんだな、音楽の力ってすごいなと。皆さんの原風景や思い出などを自由に想像して何かを感じていただければ。『Everything』もそうでしたが、曲が書き手から離れて聴き手に渡り、たくさんの人にその曲を育てていただくことが作曲家として一番の喜びです」

 アルバム発売記念コンサートが12月8日に東京・新宿区のR’sアートコートで、同21日には2016年4月に発生した熊本地震で公演中止となった時の会場である熊本県菊池市泗水ホールで行われる。実は、この熊本での被災体験が、今回の能登に向けた思いの“伏線”となっていた。

 「コンサート前夜の午前1時頃、菊池市内のホテルで寝ついた頃に激しい揺れでいろんな所に頭をぶつけて飛び起きた。ホテルが崩壊し、停電で真っ暗な中、ガラスが割れた館内から外に出て、用意されたマイクロバスで一晩を過ごしました。翌朝、被害は大きく、主催者の判断で4月16日に予定されていた菊池公演は中止となりました。ご縁のあった土地で大きな地震が起きたことへのもどかしさもあり、熊本に続く能登の地震がすごくショックで、より自分のこととして受け止めました」

 今回の熊本のように、将来は能登でも公演の実現を願う。「環境が整ってから良きタイミングでやりたい。例えば、『Noto』に歌詞をつけて皆さんが一つになって合唱イベントができればいいな…などと考えています」。被災地の少年のつぶらな瞳の中、確かに波打っていた能登の海に思いをはせた。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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