アマ落語全国大会、視覚障がい持つ宮永さんが優勝「夢か現実か」“師匠”は桂枝雀さんのCD 文枝も絶賛

 アマチュア落語家の全国大会「第16回社会人落語日本一決定戦」の決勝が8日、大阪府池田市内で開催され、創作落語「こってまんな」を披露した、呆っ人(ぽっと)こと、宮永真也さん(45)=兵庫県、鍼灸マッサージ師=が優勝(16代目名人)に輝いた。視覚障がいを持ち、現在は「光を感じるくらい」という宮永さん。悲願の優勝に「いまだに現実味がない」と語った。

 宮永さんは付き添いの肩を借りながら高座へ。マッサージ師のもとにニューヨークから来た外国人、とにかく勤勉な少年など“珍客”が訪れて…という職業を生かしたネタで会場の爆笑をかっさらった。優勝が決まった直後のインタビューでは「優勝しか狙っていなかった」と胸を張ったが、その後の囲み取材では「いまだに現実味がないので、夢か現実かよく分からない状況です」と困惑まじりに優勝をかみしめた。

 宮永さんはおよそ25年前、20歳の時に「網膜色素変性症」と診断を受けた。病状が進行するにつれ視野は狭くなり、できることも次第に減っていった。輪郭がぼんやり分かる程度まで進行した15年前、1999年に亡くなった故二代目桂枝雀さんの落語に出会ったという。

 宮永さんは「目が見えなくてもできる趣味を探していた中で、最初はカラオケがええかなと思っていたんですけど、3~4曲の歌詞を覚えた時に『落語も覚えられるんちゃうか』と思って。図書館で枝雀さんのCDを聞いて」と出会いを振り返った。

 仕事のかたわら落語に打ち込み、同大会にも出場を続けてきた。第11回(19年)で初めて決勝に進出するも、古典落語「延陽伯」の途中でセリフが飛んでしまうハプニングに見舞われ不完全燃焼に終わった。

 「前に決勝にでた時はとんでもない失敗をしたので、今日はとりあえず何も失敗しないようにと、稽古に稽古を重ねて」と宮永さん。手応えについては「何が良かったのかは自分では分からないんですけど」とした上で、「所作に気をつけて、声も皆さんに聞こえやすいように。基本的なことですけども、それが良かったのかなと思います」と話した。

 大会統括の桂文枝(81)は宮永さんを「ダントツでした」と激賞。所作の丁寧さ、描写の的確さに加えて「発想が面白かった。どうひっくり返っても僕には思いつかない」と絶賛した。その上で「落語はただ笑わせればいいというものではないので、(ネタの中に)もう少し人情味が加われば」と付け加えた。

 今大会は国内外から339人が応募し、162人が事前審査を通過。7日に開催された予選会を突破した10人が決勝でしのぎを削った。2位はおきらく亭すい好(おきらくてい・すいこう)こと、宜野座一さん(64)、3位は参遊亭小遊(さんゆうてい・こゆう)こと、荒井久美子さん(62)が選ばれた。また、立命亭雷都(りつめいてい・らいと)こと、新川慶光さん(37)が市長賞に輝いた。

 文枝は今大会を「レベルが高かったですね」と総括。「それぞれの仕事を生かした落語を」と“社会人らしさ”を改めて求めた。

(よろず~ニュース・藤丸 紘生)

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