投稿後3年経っても定期的にバズる“神動画”「これを待っていた」全観劇者が感涙にむせび泣く
歌舞伎に宝塚、ミュージカルにセリフ劇…観劇が趣味の人からは「神動画」とたたえられているものがある。福岡・博多座が製作した「検証動画シリーズ」だ。
劇場に足を運んだことがある人ならば、前席の人が椅子の背もたれに背中を付けずに前のめりになられて、「ほとんど見えない!」となったことは一度や二度はではないだろう。観劇者界隈で「ノメラー」という言葉もあるほど、観劇でも最も困る行為の一つだ。またスマホの音が鳴り響くのはもちろん非常に迷惑だが、暗闇に浮かび上がるスマートフォンの明るい画面にもイラッっとしたこともあるはず。
そんな悩める観劇者が「定期的にバズってほしい」と願うのが、博多座の“神動画”検証動画2本だ。実際にどれだけ他の観客に迷惑になるのかをスタッフが検証。1本目は「前のめりは後ろの席の視界をどれくらいふさぐ?」で2022年4月にアップされ、10万いいね、8.9リツイート。2本目が23年1月の「スマートフォンとスマートウォッチの光はどれくらい目立つ?」で3.1万いいね、3万リツイート。劇場のツイートとしては異例の数字となっている。
この2本の動画は、スタッフが真後ろ、少し離れた席、かなり離れた席でそれぞれ検証。前のめりになられると、真後ろの席では、舞台上の人物が全く見えなくなり、見えるのは前の人の頭だけ。またスマホの光は劇場のどこからでもはっきりとわかることが検証。そのため何年も前のツイートだが、観劇ファンが定期的にSNSで掘り起こして取り上げ、「こんな動画を待っていた!」「博多座、有能すぎる」「他の劇場でも広めて欲しい」と何度も話題になっている。また劇場初心者からも「こんな見え方になるなんて知りませんでした」と感謝の声が上がっている。
2本の動画を作成した博多座宣伝担当者に、よろず~ニュースの取材に、動画に込めた思いを明かした。
-『前のめり』動画を作るきっかけは?
「2022年5月の舞台『千と千尋の神隠し』に合わせて作成しました。コロナ禍の真っ只中で、お子様も多い満席公演で、楽しみにしているお客様を悲しませたくないという気持ちと、客席のスタッフに相当な負荷がかかることが予想されたので少しでも解消できればという気持ちでした。また、この公演を続けてきた出演者・裏方のスタッフのみなさんのご苦労も聞こえてきていたので、その頑張りに報いたいという気持ちもありました」
-続いて『スマホの光動画』も作成された
「スマートフォン・スマートウォッチの光動画は、2023年1月のミュージカル『エリザベート』に合わせて作成しました。ここ数年、上演中のスマートウォッチの光が気になるというお声が顕著に増えており、無意識に光らせている方がほとんどなので、知っていただければと思いました。特に『エリザベート』は暗いシーンが多かったのと、博多座がツアーの最終公演だったので、出演者もお客様も並々ならぬ思いをお持ちだと思ったので、このタイミングでアップしました」
-2本の動画とも、大変話題になった
「ある程度の反響は想定していましたが、特に前のめり動画の10万いいねは予想をはるかに越えたものでした。ありがたかったのと同時に、『私もあのとき…』というお声の多さに胸が痛みました。ただ、前のめりの方も悪気はないので、知っていただくきっかけになればと思います」
-劇場内では電源を切るようにと案内しているが、ついうっかり切り忘れてしまうこともある。そのためにスマホの光動画がきっかけで、万が一電源を切り忘れても安心なグッズも誕生した。
「昨年25周年記念グッズで『遮光ポーチ』という博多座オリジナル商品も生まれました。おかげ様ですぐに売り切れたので、増産し、現在劇場でご購入いただけます」
-他にマナー動画を作る予定は?
「帽子のつばが後ろの方の視界に影響することや、上演中の会話はとても気になるという動画は作りたいと思い構想中です」
動画をきっかけに、前のめりの観客は少なくなったというが、スマホの光とともに皆無になったわけではない。一人ひとりのちょっとした気遣いで、全員が気持ちよく観劇できる。博多座の検証シリーズは全観劇者の強い味方になっている。
(よろず~ニュース・石川美佳)
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