佐村河内氏 18年前から別人が作曲
「現代のベートーベン」と称された両耳の聞こえない作曲家、佐村河内守=さむらごうち・まもる=氏(50)の作品を、約18年前から別の人物が作曲していたことが5日、明らかになった。
別人が作曲した作品の中には、ソチ五輪のフィギュアスケート男子代表の高橋大輔(27)=関西大学大学院=がショートプログラムで使用する「ヴァイオリンのためのソナチネ」も含まれており、メダルを期待される日本のエースがとんだ騒動に巻き込まれた。
「現代のベートーベン」ともてはやされた耳の聞こえない作曲家が、ペテン師に転落した。
この日未明、佐村河内さんは代理人を通して、十数年前から作曲は特定の別の人物が行い、佐村河内氏は楽曲の構成やイメージを提案するだけだったことを認めた。また、この別人が桐朋学園大作曲専攻非常勤講師の新垣隆氏(43)と判明。同氏は「私は佐村河内氏のゴーストライターを18年間やっておりまして、その件についておわび申し上げたい」と記した書面を報道各社に送り、6日に都内で会見を開く予定だ。
佐村河内氏は1963年に被爆2世として広島県に生まれ、独学で作曲法を習得したという。35歳で全ろうとなったが「交響曲第1番 HIROSHIMA」などで核廃絶を訴え、また東日本大震災の被災者に向けた「ピアノのためのレクイエム」などで注目され、昨年3月にNHKスペシャルで取り上げられていた。
NHKは、各ニュースで「視聴者の皆さまに深くおわびします」と謝罪。CDの発売元の日本コロムビアは、HPで「驚愕(がく)しており、大きないきどおりを感じております」と謝罪した上で、同氏作曲名義のCD3作とDVD1作を出荷停止とし、この日から予定されていた楽曲の配信も取りやめた。予定されていたコンサート19公演の中止も決まった。世界文化社は同氏のインタビュー記事を掲載したとして、月刊誌「家庭画報」最新号の新規の出荷を停止、講談社は同氏の半生をつづった「交響曲第一番」の絶版と回収を決定し、幻冬舎も同作文庫版の絶版とした。
佐村河内氏の代理人は「本人は深く反省している」とし、現在の状態を「精神的にも不調を来し、自身の思いをきちんと伝えられる状況にない」と説明している。