京大・山中教授 画像切り貼りしてない

 京都大の山中伸弥教授が海外の学術誌に2000年に発表した論文の画像や図表にインターネット上で疑義が指摘され、京大iPS細胞研究所が28日、「論文の報告内容が正しいことに疑いはない」とする調査結果を発表した。山中教授は記者会見し、関連の生データの一部が自身のノートから発見できなかったと明かし「研究者として心より反省し、おわびする」と話した。

 自身の論文に指摘された疑義について山中教授は「日本の研究の信頼が揺らいでいる状況でこのような報告をしなければならないことをおわびする」。繰り返される謝罪と釈明の言葉に、ノーベル賞受賞者としての自負と自責の念が交錯した。

 論文は、さまざまな組織や細胞に変化するマウスの胚性幹細胞(ES細胞)を使った解析データ。画像の類似や、図表のデータが整い過ぎており不自然との疑義が出ていた。これに対して山中教授は「研究結果は複数の研究者により再現されており、研究者倫理の観点から適切でないことをした記憶もない」と主張。また「画像を切り貼りするような技術はなかった。そうする必要も理由もない」と話した。

 京大iPS細胞研究所によると、ネット上で疑義が指摘された13年4月に調査を開始し、山中教授から段ボール箱5個分の実験ノートの提出を受けた。だが、関連の生データの一部を山中教授のノートからは発見できなかった。

 これまで疑義の指摘を公表しなかった理由を「世間におもしろおかしく騒がれると複数の人から忠告を受けた」と説明。だが「きょう雑誌社から記事にすると連絡があり、それが(公表を)後押しした」と打ち明けた。

 京大iPS細胞研究所長としての立場に触れ「学生に研究データの保存や記録について厳しく指導しているのに、それができていなかった昔の自分を恥ずかしく思う」。

 降圧剤ディオバンやSTAP細胞など一連の問題で、日本の研究への信頼が揺らいでいると問われると「記録をしっかりつけることを研究者全員がやっていくしかない」と言葉を振り絞った。

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