「美味しんぼ」に福島県知事らが反発
東京電力福島第1原発を訪問した主人公らが鼻血を出す描写が物議を醸している漫画「美味しんぼ」の最新エピソード「福島の真実(23)」が掲載された小学館の「週刊ビッグコミックスピリッツ」が12日、発売された。この日、「福島の真実」に複数の閣僚や自民党幹事長、福島県知事らが一斉に反発。政界挙げての大「美味しんぼ」バッシングが展開されたが、最新号で問題が飛び火したかっこうの大阪では橋下徹市長が冷静に対応した。
最新号では、井戸川克隆前福島県双葉町長が「福島県に住むな」と発言したり、荒木田岳福島大准教授が「福島を広域に除染して人が住めるようにするなんてできない」などと話したりする場面が登場する。また、「岐阜環境医学研究所」の所長が、大阪の震災がれき焼却場近くの住民千人を対象にした調査で「鼻血、眼、のどや皮膚などに、不快な症状を訴える人が約800人もあった」と指摘している。
この日は、先週の鼻血描写に大臣がかみついた。菅義偉官房長官は記者会見で「住民の被ばくと鼻血の因果関係は考えられない」と批判。下村博文文部科学相は第1原発を視察後、「科学的、医学的な根拠はない。福島県民にとってひどい迷惑だ」と批判した。
自民党の石破茂幹事長も記者会見で「風評被害を払しょくしようとする中で、それに逆行することは自制すべきだ」と語った。
福島県の佐藤雄平知事もさいたま市で「風評被害を助長するような印象で、極めて残念」と批判。最新号についても「残念で遺憾」と繰り返した。
福島大は荒木田准教授の見解について「個人の見解であり、福島大学としての見解ではない」「福島県民をはじめとした多方面にご迷惑、ご心配をかけたことは大変遺憾」とコメントした。
問題が飛び火した大阪では、橋下市長が松井一郎大阪府知事と連名で発行元の小学館に抗議文を送付した。
橋下市長は、医師会や区役所に聞いたところ、当該事実は確認できなかったと説明。自身が「美味しんぼ」の愛読者であることを明かし「完璧な漫画なのに、今回はちょっと残念。根拠薄弱。ちょっと取材が甘すぎるのでは」と指摘。「言論の自由、編集権もあるので高圧的には言えないが、双方の主張を並べて、あとは読者が判断すればいいのでは」と、冷静に語った。