“引っ越しあいさつ”する?しない?ストレスに発展しやすいご近所付き合い 特に子育て世代は要注意

 40代のA子さんは賃貸マンションに住んで3年目。帰宅した夫が「お隣、引越してきたみたいだね」と告げた。「後であいさつにいらっしゃるかもね」とA子さんは待っていたが、一向に来る気配がない。翌朝、壁にボールを蹴りつけた音で目が覚めた。子どもたちの声も聞こえてくる。顔が見えないだけに、心中穏やかではない。

 1週間後、ジム仲間に「最近は引越しあいさつしないのかな?お隣、来ないのよね。おまけにうるさくて」と漏らした。A子さんは、入居時は両隣へ知らせておくものだと考え、上下の階へは生活音による双方のトラブル回避のため、家族そろってあいさつした。そろそろ、管理会社に苦情連絡を入れようか迷っている。

 分譲マンションに住んで9年目の50代のN子さんは「うちはあいさつでド偉い目に遭ったわ」と眉をひそめた。隣に入居してきたオシャレな同年代の夫婦。有名洋菓子店の高級菓子を手渡されると、初対面だというのに年齢や仕事内容など、根掘り葉掘り質問攻めをされ、恐怖を感じたという。

 「私は深入りしすぎたと反省中」と下に越してきたママ友との関係に疲弊しているという30代のM美さんはため息をついた。「会社の借り上げマンションに、同時期に越してきた下の階の一家には、同じ学年の小学生の子どもがいて、情報交換もできるし心強かったんだけど」。とても人懐っこいママで、あいさつで意気投合してLINE交換したという。しかし親しくなるにつれ、身勝手なお願いをされることが増えてきた。車の運転をするM美さんに習い事の送迎や、パートが遅くなったときの子どもの面倒を何度も頼んできた。そしてついには体調を理由に、週末も預かって欲しいと言い出す始末。M美さんは、ママ友と鎖でつながれたような依存関係になってしまったことを悔いている。

 コロナ禍で他人の家に伺うことがはばかられ、引越しあいさつをしない人も増えた。だが子どもの泣き声や生活音トラブルなどは、対面でのあいさつがあるだけで“お互いさま”と広い心で受け止めてもらえることもある。集合住宅の住人の中には、新しい入居者の些細な配慮がコミュニティの安心感に繋がると考える人も一定数いる。関係性の構築が出来ていないうちに、パーソナルスペースに踏み込むのは考えたい。長く住み続けることができる環境づくりのためにも、距離感を考えながら、自分にあった関係性を築いていきたい。

 (デイリースポーツ特約・市来島姫)

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