遺品整理のプロが語る 後悔する前に“生前デジタル整理”を! パスワード解除に多額の費用
段ボールに詰まった沢山のアルバムを整理しておこうと思い立った70代のS夫妻。若い頃の写真が出てくると、懐かしい思い出話に花が咲き「やっぱり残しておきたい」と結局捨てられず一日終わってしまった。人生何が起きるか分からない。元気なうちに不要なものを処分しておきたいと、いざ片付け始めても、思い出の整理はなかなか進まない。
遺品整理のプロである(株)スリーマインドの代表取締役社長・屋宜明彦氏によると、遺品整理で最も多い問題はペットの飼育。残されたペットの世話を誰が引き継ぐか、新しい飼い主をどうするかなど、生前に決めておくことが大切だ。
次に現代社会の遺品整理で、とかく問題になっているのが『デジタル遺品』。パソコンやスマートフォンにパスワードロックがかかっている場合、パソコンのパスワード解除費用は1台につき1万円以上かかり、スマートフォンではなんと20万円以上かかる。身の回りの整理をする中で、自分が所有するデジタル情報、例えばオンライン銀行口座やオンラインサブスクリプションなどを含めた、デジタル関連の整理をしておくことを勧めている。
特に注意が必要なのは、指紋認証や顔認証など生体認証の場合。生体認証は、生きている人の指紋、虹彩、顔認証などを使用して認証を行う技術。この認証方法は生前の個人情報に基づいているため、死亡した場合には認証できない可能性が高く、スマートフォンの解除ができない場合も多い。
キャッシュレス化が加速しており、デジタル給与も解禁となった昨今、電子決済システム、例えば○○ペイに、故人の口座残高が100万円残っている場合も。だが故人が使用していた電子決済システムの情報がわからない場合、その口座残高を遺族に託すことはできず、気づかれないままとなる。このような問題を未然に防ぐためにも、生前にデジタル整理をすることが重要だ。
予期せぬ事態に備えるためにも、大切な個人情報を残しておきたい。自分が使用している電子決済システムの種類、アカウント情報、ログイン情報、定期的に利用しているオンラインサービスの支払い情報など、エンディングノートに書き留めておくと、いざというとき遺された家族は安心だ。
ただし生前は自分以外の人物に利用されないよう、すぐに見つからない安全な場所に保管する必要はありそうだ。
(デイリースポーツ特約・市来島姫)