鍋料理の常温保存、冬なら大丈夫は間違い?潜む危険とは 再加熱方法にも注意
年末が近づくにつれて食べたくなるのが鍋料理だ。冬場は毎日のように続くが、1日で食べきれないこともある。そういう時、母は決まって「明日、温めて食べましょう」と言う。
だが冷蔵庫に入りきらないサイズの鍋の場合、そのままコンロの上に置いておくことも。本来食材の常温保存はあまりよくないはず。母の言う通り翌日に温めれば本当に安全なのか、気になってエフコープ商品検査センター「りんご館」に聞いてみた。
同センターでは鍋のまま放置しがちな寄せ鍋・味噌汁・カレーを4度(冷蔵庫内を想定)・10度(冬の暖房なしの室内を想定)・25度(暖房の効いた室内を想定)の3パターンで放置し、2日間にわたり生菌数の増加数を測定。その結果、4度・10度で保存した鍋料理には菌の増殖はほぼ見られなかったという。
だが25度で保存した寄せ鍋は、翌日時点で2億1000万個も菌が増殖。一般的に腐敗していることが多いと言われる生菌数1000万個といわれており、その増殖ぶりに驚かされる。カレーや味噌汁でも25度で保存した場合は、1000万個を超える菌の増殖が確認されたという。
また2日目の鍋を温めて食べることはよくあることだが、加熱方法によっては十分な殺菌ができない可能性があるという。同センターでは25度で2日間放置した鍋料理を加熱した後も測定。コンロで温めた(強火で熱し、沸騰後中火で1分加熱)場合、ほとんどの菌の死滅が確認された。しかし同条件の鍋料理を電子レンジで温めた(寄せ鍋と味噌汁は600Wで1分40秒、カレーは2分10秒加熱)場合、菌が1000個以上残っていたという。これは、電子レンジはコンロに比べ加熱ムラが生じやすいことが原因だと考えられる。
同センターによると、一般的な殺菌条件(75度で1分間)を満たしていれば菌数は減るとそうだ。ここで大事なのは火加減ではなく、鍋の中の具材の温度。今回の加熱方法と異なり弱火で加熱したとしても、具材の中心が75度で1分間以上温められていれば菌は減るという。
コンロでしっかり火を通せば菌自体は死滅するが、鍋を暖房の効いた部屋に放置している間に増殖した菌が作り出したぬめりや匂いは残ってしまう。もし鍋料理が余ってしまった場合は、できるだけ早く低温で保存し、再加熱する際は中心部までしっかり火を通すことを心がけたい。
(デイリースポーツ特約・桐田えこ)