氷をくわえて…冬に夏のラグビーシーンの撮影
ケガはみんな、しょっちゅうやっていました。脱きゅうしたり。擦り傷、切り傷、打撲は日常茶飯事です。骨折はなかったな。
ラグビーシーンの撮影では、大学や高校の同好会の人たちが来ます。経験者ですから、若い俳優さんたちは、最初はついていけない。タックルにしても普通通り来ますから、最初は悲鳴を上げていましたよ。
でも、だんだん脚も体力もついてきて、後半はいい試合ができるようになっていきました。生徒たちは1日2日、ずっと試合のシーンの撮影です。若いからできたと思う。
冬に夏のシーンを撮ったりしていて、相手との戦いより疲労と寒さとの戦いです。グラウンドですから、セリフを言う時に息が白くなってしまうので、氷をくわえてやってました。夏に冬のシーンを撮影する時は、真夏なのにマフラーに上着を着なきゃなりません。
監督は4人でしたが、カメラマンは1人でした。大学のラグビー経験者で、喜多崎晃(きたさき・あきら)さんといいます。色んな映像の作り方を、彼が考えたんです。監督はラグビーを知らないので、カメラマンに喜多崎さんが選ばれて、1人で朝から晩まで撮影していました。
監督は編集があるから、1週間前に撮り終えて、3~4日で編集します。監督は個性がありましたね。石原裕次郎さんの映画を撮っていた方もいました。
台本でビシッと決まっているので、監督は午前中に100カットとか、撮らなきゃなりません。そこで、合理的に2人の会話を横で撮って後ろと前で撮ってセリフを全部入れたり、次のシーンとその前のシーンを同時に撮ったりするので、こちらもセリフをガチッと入れていかなきゃならない。
そういう監督の腕っていうか、匠(たくみ)の技ですね。早い時間で撮って、できた回はインパクトがあって面白かった。やはり映画監督ってすごいというか。