苦労した撮影での「本物の涙」
僕は当時、フェアレディZを改造して乗っていたんですが、こないだ初めて知ったんですけど、僕の車をみんな「ゴキブリ」って呼んでいたんですよ!
マフラーを改造して、フロントもスポイラーを付けてレース仕様にしていて、真っ黒だったんです。だから、僕の車が来ると「ゴキブリだ」って。
僕はアメリカかぶれでした。サングラスはレイバンとか、アメリカ、アメリカで。
当時はロバート・デ・ニーロやアル・パチーノの全盛期でした。デ・ニーロ主演の映画「ディア・ハンター」とか、そういう演技がリアリティーだと思っていて、みんなに「ああいう映画を見て勉強しなきゃダメだ」と言っていました。
休みの日に映画を見に行くと、「スクール☆ウォーズ」に出ている俺は何をやっているんだ?って放心するところはありました。スケール感とか、内容も「ディア・ハンター」とはものすごく遠いし-マイケル・チミノ監督はこの間、亡くなっちゃいましたけど。でも、今「スクール☆ウォーズ」を見ると、それとは違う温かさとか、ドラマの緊張感とか、完成度は負けていないと思います。
「スクール☆ウォーズ」は、いわゆる大映ドラマのパターンじゃない。大映ドラマのテイストは入ってますが、実話のドラマ化で、原作はスポ根と、生きるっていうことと、チームワークという、NHKに近い内容で、娯楽性もありません。そこに大映ドラマの娯楽性を入れて。フィクションでどういうリアリティーを感じてもらってもいいんです。僕はリアリティーを求めて、ホントにつらい顔がどうなるか、とか。
「泣き虫先生はここで涙を見せる」と、台本にいっぱい書いてありました。どうしたら泣けるか、いろいろ工夫しました。
目薬を差したら、ずっと目薬頼りになります。実話のドラマなので、滝沢賢治のモデルである山口良治先生も実際に見ます。目薬みたいな涙が流れている、と思われたら嫌ですよね。学生さん、俳優さんにも目薬禁止令を出しました。
絶対に使わないわけじゃない。右の目から涙が出て、20分後に同じカットを撮った時、さっきは右の目から出ていた涙が今度は左から出てしまったことがあって。つながりを確保するのに記録さんはうるさいので、そういう時は使いました。