松村雄基(前編)きれいな涙で男泣き「これは負けた」と思った
【“川浜一のワル”大木大助役で、今に至るまで鮮烈な印象を残しているのが松村雄基だ。「不良少女とよばれて」「ポニーテールは振り向かない」など数々の名作で主要キャラクターを好演した大映ドラマを代表するスターだが、中でも「スクール☆ウォーズ」では、歌いながらケンカする破天荒さ、イソップとの友情、悲願の花園出場と、物語の核となる大木を見事に演じきった。松村自身、公式サイトで代表作に挙げている。】
年下の俳優さんたちがいたら指導しなければいけませんが、ロケに行って夜中に飲むということは「スクール☆ウォーズ」にはありません。撮影が早く終われば生徒役の俳優さんたちとボウリングに行ったりしていたんですが、松村雄基さんはなかなか付き合ってくれませんでした。
数年前に知ったんですが、撮影が終わってから、おばあちゃんの介護をしていたらしいんです。スタッフの一人だけは知ってたんですが、他には誰も知らなくて「何であいつ帰るんだ?」って。まさに大木大助な、そういうやつでした。
大木はお母さんが心臓病で、物語の途中から入ってくるんですが、松村さんがどんな芝居をするか見ていたら、きれいな涙で男泣きして「これは負けた」と思いました。僕もつられて涙しました。
彼のバックボーン、そういう生き方がそういうきれいな涙を流させたんだと、そういう話を聞いてやっとわかったんです。
彼は「スクール☆ウォーズ」で、ホントに目立つ存在で、かっこ良かった。人望が非常に厚かったので、悔しかったですね。不良の役ですが、実際の松村さんはホントに優等生タイプで、みんなから慕われていたし、僕の行き届かない精神的なフォローもすごくしてくれて、僕の甘さにもちゃんと付き合ってくれて、自分にも非常に厳しくて。
彼は舞台が好きで、年上の女優さんにも非常に評判がいいんです。マジメだし、朝5時くらいに起きて、発声練習やストレッチをして。僕も一カ月、一緒に舞台をやったんですが、セリフ覚えもしっかりしているし、完璧主義で。同じB型なんですが、よく怒られました。「だらしがない。もっとしっかりしてください」って。それがなぜかはまた次回。