みんな真剣に考え、心の奥で叫んだ「悔しいです!」
昼飯に行った彼ら(部員役の俳優たち)が45分くらい過ぎて帰ってきて、テストです。
僕はテンションを上げていたので、森田光男役の宮田恭男さんのの顔を見て「お前、大丈夫なのか」って言ったら「大丈夫です」って。テストしたらけっこういいテンションで来たんですけど、それでもまだ心配で。
本番で、僕は目いっぱいテンションを上げて「悔しくないのか!!」って叫んだんですよ。そしたら宮田さんが「悔しいです!」って、青筋を立てて。
そのシーンの撮影が終わって、僕は松村雄基さんに、変な表現なんですけど「アイツ、タマを抜かれたヤギみたいな顔してたな」って言ったらしいんです。宮田さんはちょっとヤギ顔なんですよね。僕が「タマを抜かれたヤギが叫んでるみたいな顔してた」って、すごく喜んでたって。
僕は覚えてなかったんですが、松村さんは当時、「表現はあまりきれいじゃないけど、言い得てるよな」って思ったらしい。そのくらい魂のこもった宮田さんの叫びでした。
この間、宮田さんと会った時にその話が出たんですが、彼も昼飯を食いながら自分の人生を振り返って、色んな悔しいこととか、「悔しいです!」って叫びにつなげるにはどうしたらいいか考えながら食事していたと。あ、そうなんだ、考えてたんだ、ちゃんと。彼らも20歳くらいだったけど、真剣に考えてくれてたんだなあって判明しました。
見てる人たちもみんなそういう思いで、一緒に心の奥で叫んだんじゃないかと思うんです。自信満々の人間なんて、そうはいないと思うんですよね。みんなコンプレックスを抱えて生きていて、やっぱり強くなりたい、大きくなりたい。それをやるのは自分なんだよってことを、あのシーンが如実に教えてくれるじゃないですか。やるのはお前たちなんだ、でも俺はそのためにどんなこともやるよ-そういうシーンだったと思います。