オーナー鈴木氏「無事に戻ってきて」
「スプリンターズS・G1」(30日、中山)
いよいよ秋のG1が開幕する。“短距離王国”とうたわれる安田厩舎からは、夢のワン・ツー・スリーを狙う春の高松宮記念1、3、4着馬が出陣。もちろん筆頭格は同レース連覇だけでなく、史上初となるスプリントG1・3勝馬を目指すカレンチャンだ。秋初戦をひと叩きされ、態勢は万全。偉業達成を国内G1・3連勝で決める。
カレンチャンのオーナーは、六甲山のふもとで眼科クリニックを営む鈴木隆司氏。この地で生まれ育った野球少年は、物心がついたころから、タイガースと競馬をこよなく愛するようになっていった。ジョッキーにあこがれた時期もあったが、背が伸び過ぎて断念。「こうなったら馬主になるしかない」。その夢はまず、クラブの一口馬主としてかなうことになるが、ひとつ勝つと「自分の馬がほしい!」という思いが強くなっていった。
馬主の資格を取得して十数年。07年のセレクトセールで、1頭の芦毛の当歳馬を競り落とした。カレンチャンだった。「何頭かピックアップした中で(予算などが)一番、現実的でした。コンパクトで筋肉がプリッとしていて、それでいて硬さがない。好みのタイプでしたね。クロフネとトニービンという配合も、気に入りました」。冠名の“カレン”は長女・かれんさんが由来となっているが、これは!と思う牝馬に出会うまで、ずっと温めていたダイレクトな馬名をつけたのも、期待の大きさゆえだった。
スプリンターズSが終わってからのことは未定だが、来春に繁殖に上がることは、ほぼ決定している。どんな気持ちで見守るのだろうか‐。「これまで、すばらしい思い出とたくさんの夢を、運んでくれました。ファンも多い馬ですからね。大外でも何でもいいんです。不利を受けないように、無事に戻ってきてくれたら」。美しく流れるような関西弁に、一段と温かみが増していた。