「秋華賞・Ｇ１」（１４日、京都）

　手に汗握るゴール前の攻防を約７センチの差で制し、ジェンティルドンナ（牝３歳、栗東・石坂）が１０年アパパネ以来、史上４頭目の牝馬３冠の偉業を達成した。父ディープインパクトは０５年に牡馬３冠を達成しており、ＪＲＡ史上初の父子３冠馬が誕生。次戦にはジャパンＣ（１１月２５日・東京）も視野に入っており、オルフェーヴルとの３冠馬対決の可能性も出てきた。

　劇的なトリプルクラウンだった。３冠に王手をかけたジェンティルドンナと阻止に燃えるヴィルシーナ。誰もが息をのんだゴール前の激しい追い比べ。偉業達成か、それとも‐。写真判定の結果、勝利の女神がほほ笑んだのは２冠馬だった。

　約７センチ差が明暗を分けた。「勝つのがいかに難しいか痛感したし、勝ててよかった」。石坂師が安どの表情を浮かべる。過去、牝馬３冠を成し遂げたのはわずか３頭。想像以上の重圧がのしかかっていた。「勝ったと思ったけど、内から（ヴィルシーナが）来たので。でも何とか勝ってほしいという気持ちだった」。簡単には勝たせてもらえなかった。「ひとつでもすごく難しい。桜花賞、オークスと勝って３冠と思ったが、結果は鼻差。偉大なジェンティルドンナがやってくれた」と勝負根性に目を細める。

　昨年のオルフェーヴルに続き、馬主のサンデーレーシングは２年連続で３冠馬の誕生となった。吉田俊介代表は「ヒヤヒヤでした。ゴールに入った瞬間はどっちか分からなかったけど、スローで見て“勝ったのかな”と。掲示板で(14)番が１着と出てやっと安心した」と満面の笑みを浮かべた。

　まだ伝説は序章にすぎない。指揮官が「牝馬だし、目いっぱいの調教をやっていないつもり。もっともっと走れる」と胸を躍らせれば、吉田氏も「これからがすごいんじゃないかな。どういう相手とどういう競馬をするのか。楽しみでしょうがない」と期待を寄せる。

　夢の３冠馬対決が実現するかもしれない。凱旋門賞で２着に惜敗した昨年の牡馬３冠馬オルフェーヴルは、次戦の選択肢にジャパンＣを入れている。「エリザベス女王杯（１１月１１日・京都）か、ジャパンＣでしょう。オルフェーヴルとの対決？それもありますね」と吉田氏は目を輝かせた。

　視線は海の向こうにも向けられている。トレーナーは「世界に行かなければならない馬だと思っています」と力を込めた。父ディープインパクトも超えられなかった世界の壁を打ち破る日を描いて、３冠牝馬の夢は広がり続ける。