【天皇賞】フラッシュ復活、ミルコ感涙
「天皇賞(秋)・G1」(28日・東京)
天皇、皇后両陛下が観戦されるなかで行われた秋の盾で、最強世代のダービー馬がよみがえった。直線で最内を突いた、ミルコ・デムーロ騎乗の5番人気エイシンフラッシュが連敗を12で止め、約2年5カ月ぶりの美酒。今後はジャパンC(11月25日・東京)から有馬記念(12月23日・中山)を予定する。2着は1番人気に推された3歳馬のフェノーメノで、3着はルーラーシップ。無傷でのVに挑んだカレンブラックヒルは5着に終わった。
内から閃光が走った。長い直線、目の前にあいたビクトリーロードをエイシンフラッシュが突き進む。最強世代、10年のダービー馬が天覧競馬で待望の復活Vを決めた。
「ドアが開いたようだった」。内へと相棒をリードしたM・デムーロは静かにその時を待った。折り合いをつけて、脚は存分にたまっている。直線でどこをさばくかだけだ。ポッカリとあいた前はまさに“勝利への扉”だった。内ラチ沿いをはじけ、久々に先頭でゴールを突き抜けた。「とてもうれしい。スペースがあったし、運もあった。とても賢いし、ゴールがどこにあるのか分かっている。ハートが強くて切れる脚を使う。すごくいい反応だった」と笑顔で会心の騎乗を振り返る。
7年ぶりの天覧競馬。ウイニングランを終え、天皇、皇后両陛下の御前で馬を止めた。下馬するとヘルメットを脱ぎ、ひざまずいて最敬礼。「特別な日。勝てば何かしようと思っていた」。東日本大震災直後の11年ドバイWCでは、ヴィクトワールピサの馬上で喪章に手を添えた。馬上に戻ったあと、両手でつくったハートマークを「日本のみなさんが大好き。ボクの日本に対する気持ちです」と説明。日本人の心を持つイタリアンはこの日も涙で目を潤ませた。
ダービーを制してから国内外のG19戦を含む12連敗。鞍上は「馬に“お願いだから勝たせて”って話をしたんだ。ボクが勝つために待ってくれていたのかな」と笑った。挫折を味わうなかで繰り返した試行錯誤。藤原英師は2年5カ月の月日をかみしめる。「長いというよりも感謝やね」。鞍上とのコンタクトも密に取ってきた。勝利はその結晶だ。「話していたポジション通り。パーフェクトだし、さすが。ゴール前は声が出た。これまで何かが狂っていたのが、きょう全てのパーツがそろってフィットした。天覧競馬を勝てて幸せです」と頬を緩ませる。
今後はジャパンCから昨年2着だった有馬記念を予定。デムーロは11月19日で今回の短期免許が切れる。生産者・社台ファームの吉田照哉代表は「JCはルメールで行く」と発表。再び差し込んだ光筋を背に、盾を制したダービー馬は輝き続ける。