【エ女王杯】伏兵レインボー雨の女王
「エリザベス女王杯・G1」(11日、京都)
レース史上初めて雨中での決戦となった女王杯。経験が3歳馬の夢を砕いた。7番人気レインボーダリアが直線でのたたき合いを制し、重賞初VをG1で達成した。オーナーの田中由子氏(66)の所有馬はわずか2頭。小さな勢力が頂点に立った。元メジャーリーガー・佐々木主浩氏の所有馬ヴィルシーナは首差及ばず、またしてもG1初制覇はかなわなかった。最後方から追い込んだ5番人気ピクシープリンセスが3着。2番人気フミノイマージンは11着に沈んだ。
降りしきる雨のなかで経験豊富な古馬の意地がさく裂した。レインボーダリアが道悪馬場を苦にせず外からグイグイと伸びる。最後は3歳馬ヴィルシーナとの壮絶なたたき合い。首差だけ抑え込み、初タイトル奪取をG1の舞台で成し遂げた。
クールな柴田善は小さく右手で拳をつくった。「馬の状態がすごく良かったから自信を持って臨めた。返し馬でこういう馬場も得意だなと感じたんだ」と確かな手応えを胸に愛馬を誘導。「1角までリズム良く入れた。4角の立ち上がりもいいし、直線の勢いはヴィルシーナより上。何とか抑え込めると思った」。悲願のG1タイトルを目指すライバルの夢を砕き、女王の座を奪い取った。
期するモノがあった。初コンビとなった前走の府中牝馬Sでは、上がり3F32秒9の末脚で猛追して4着。「いい馬。次も乗せてほしい」と懇願した。(8)枠(15)番の外枠にも決して動じない。自身が前回G1を勝った10年宝塚記念のナカヤマフェスタは(8)枠(17)番。当時も二ノ宮厩舎の馬だった。「また外から2頭目。もしかしたらって思ったよ。プラス思考でね」。精神のコントロール術を知り尽くす46歳のベテランは笑顔で振り返る。
二ノ宮師は真っ先にオーナーへの思いを口にした。「随分とお世話になったから。最後は会長の後押しがあったのかな。雨も味方した。感激だよ」。付き合いの長かったメガネスーパー創業者・田中八郎氏は2年前の12月に71歳で死去。妻の由子氏が名義を継いだ。現役の所有馬はゴールデンダリア(牡8歳)と合わせてわずか2頭。社台グループの“1強”と言われる時代に、小さな勢力が大仕事をやってのけた。
5歳秋にして素質が完全に開花。「グングンと力をつけている。今後もG1馬に恥じない競馬ができる」とジョッキーが言えば、「もともと目立った馬ではなかった。時間、人手をかけてじっくりやる重要さがある。ひとつひとつの積み重ねでG1を獲れた。次走も様子を見ながら検討したい」と指揮官は過程を踏んでのVに胸を張る。人のつながり、そして強い思いが架けた虹はこれからも一層、美しさを増すに違いない。